物語編
第六章 第十二話 物語編
第六章 動性 と 善性
第十二話 否定を司る性 と 肯定を司る性
[楽しいばかりで、聴かせる意味の無い前半生。
苦しいばかりで、聞かせる相手の無かった後半生。
最後の最後に、貴方に出会って、意味が生じました。]
[たとえ、苦しいことばかり、続いたとしても、
苦しみから、学べることを、楽しいと思えるなら、
それこそ、福音となって、世の人を救えるはずです。]
[悔い改めにより、私の人生は価値を得ました。
どんなに苦しい人も、寧ろ、苦しんでいる人ほど、
悔い改めれば、多くを救える、使徒に生まれ変わる。]
[欲界の頂から、欲界の底まで、堕ちた私です。
私が救われた訳ですから、誰もが救われる筈です。
これは、この上もない、良き報らせに成りませんか。]
[私は、この福音を、すべての人々に伝えたい。
でも、今の私には、もう時間は残されていません。
本当に、上手く行きませんが、それもまた、楽しい。]
[最後の最後に、最高の型が、出来て良かった。
この型を心に刻み、菩薩として、転生を始めます。
次に会う時には、貴方の傍にいて、真理を伝えたい。]
すうっと、彼女の目から、一筋涙が零れ落ちた。
そして、何かを小声で呟き、素敵な笑顔を浮べた。
それから、最期まで微笑みながら、息を引き取った。