第一章 第一話 対話編
CASE 虚無 の裏に 虚空
マナミ 闇が窮まる、虚無って、どういうものなの?
マサシ 虚無とは、意味が消えて、実体が無いものさ。
マナミ 意味が、無さ過ぎると、拠り所が無くなるの?
マサシ そうだよ、闇が深くなり、恐れを感じるのさ。
マナミ 光が極まる、虚空って、どういうものなの?
マサシ 虚空とは、意味を越えて、実体が無いものさ。
マナミ 意味が、有り過ぎると、拠り処が無くなるの?
マサシ そうだよ、光が深くなり、畏れを観じるのさ。
マナミ どうすると、意味が生じて、色が生じるの?
マサシ 非Aを認めず、Aを認めると、色が生じるよ。
マナミ どうすると、意味が消えて、色が消えるの?
マサシ 非Aを認めず、Aも見ないと、闇が生じるよ。
マナミ どうすると、意味を超えて、色を越えるの?
マサシ 非Aを認めて、Aも認めると、光が生じるよ。
マナミ それなら、心の深くに、虚しさを抱えながら、
空き過ぎず、飽き過ぎず、色を求めているの?
マサシ そうだよ、虚しさから、逃げているだけだよ。
マナミ 虚しさから、逃げないで、見とめたら良いの?
マサシ そうだよ、虚しさを越えて、空に還れば良い。
マナミ ……………………!!
CASE 虚無 の先に 虚空
サトミ 無に脅える、虚無って、どういうものかな?
メグミ 虚無とは、闇が深くなり、虚しくなることよ。
サトミ 闇が強いと、恐く為るのは、どうしてかな?
メグミ 闇の中に、どんな意味も、消えていくからよ。
サトミ じゃあ、闇に偏る時は、光を求め始めるの?
メグミ そうだよ、意味を欲して、色を望み始めるよ。
サトミ 空に怯える、虚空って、どういうものかな?
メグミ 虚空とは、光が深くなり、虚しくなることよ。
サトミ 光が強いと、怖く為るのは、どうしてかな?
メグミ 光の中に、どんな意味も、消えていくからよ。
サトミ じゃあ、光に偏る時は、闇を求め始めるの?
メグミ そうだよ、意味を欲して、色を望み始めるよ。
サトミ つまり、不安を抱えながら、闇と光の間を、
繰り返し、行き来するものが、あたし達なの?
メグミ そうよ、内に抱えるものを、見ないように、
ひたすら、色々な意味を、外に求めているよ。
サトミ う~ん、内なる恐れを、見ないようにして、
徒に、外へと求めて、虚しくならないのかな?
メグミ うふっ、私に聞くのは、不安になったのかな?
サトミ ……………………
CASE 赤色 と 緑色 と 青色
サトミ ねぇ、光の三原色って、どういうものかな?
メグミ 光の三原色って、赤色と緑色と青色のことね。
どんな色でも、この三色から出来ているのよ。
サトミ 三つの色が、すべて消えると、どうなるの?
メグミ 黒の闇となり、実体の無い、虚無になるのよ。
サトミ 三つの色が、すべて現れると、どうなるの?
メグミ 白の光となり、実体の無い、虚空になるのよ。
サトミ 実感が弱過ぎても、実体が消えてしまうけど、
実感が強過ぎても、実体が消えてしまうのね?
メグミ そうよ、実体が無い、というのは、恐怖なの。
だからこそ、色々な実感を求めてしまうのね。
サトミ だからと言って、実感を求め過ぎてしまうと、
光が強くなり過ぎ、実体の無い畏れを観じる。
メグミ だからと言って、実感を避け過ぎてしまうと、
光が弱くなり過ぎ、実体の無い恐れを感じる。
サトミ う~ん、もしかして、これを繰り返すだけ?
もし、これだけならば、意味なんてないよね?
メグミ うふっ、逆に言えば、無限の意味があるのよ。
虚しさから、逃げていると、認められないの。
サトミ ……………………!!
CASE 実体がない と 実感がある
マサシ 最も恐ろしいのは、実体がない実感なのさ。
実体が無いという実感は、対処しようがない。
サトシ おかしいよ、実体が無いなら、実感も無いよ。
どうして、実感が無いのに、恐怖を感じるの?
マサシ そうさ、はじめこそ、実感なんて無いけど、
一旦、実感が有ることに、慣れてしまうと、
二度と、実体が無いことに、耐えられないよ。
サトシ そうか、慣れたものには、安心を感じるし、
慣れていないものには、不安を感じるもんね。
マサシ さらに、実体が無い恐怖には、理由がない。
原因が無いんだから、絶対に恐怖が消えない。
サトシ そうか、原因が解ると、不安が消せるけど、
原因が分からないと、不満が消せないもんね。
マサシ つまりね、消えない恐怖を、抱え込む恐怖。
こんな恐怖を、君は、怖いとは思わないかい?
サトシ 確かに、さっきまでは、意味が分からないし、
怖くなかったけど、今は、とても怖く感じる。
マサシ うん、ほら、こうして、君も仲間入りなのさ。
実感ある、実体なき、恐怖の世界にようこそ。
サトシ ……………………