第六章 第十話 対話編
CASE 業 の裏に 劫
マナミ ねぇ、カルマ、業って、どういうものなの?
マサシ 業とは、我に巡っている、小さな廻りなのさ。
マナミ 具体的に、小宇宙には、何が巡っているの?
マサシ 小宇宙には、原因と条件と結果が、廻るのさ。
マナミ どうして、小さな我々って、業に縛られるの?
マサシ 我々は、業を解しながら、学んで行くからさ。
マナミ もし、業が無かったら、どうなってしまうの?
マサシ 我々は、無気力に為って、意志が喪われるよ。
マナミ じゃ、カルパ、劫って、どういうものなの?
マサシ 劫とは、梵に巡っている、大きな廻りなのさ。
マナミ 具体的に、大宇宙には、何が巡っているの?
マサシ 大宇宙には、創造と維持と破壊が、廻るのさ。
マナミ どうして、大いなる宇宙は、劫に縛られるの?
マサシ 宇宙は、劫を介しながら、移り変わるからさ。
マナミ もし、劫が無かったら、どうなってしまうの?
マサシ 宇宙は、無意味に為って、法則が失われるよ。
マナミ 業にせよ、劫にしても、束縛しているようで、
むしろ、制約が無ければ、意味が消えるのね。
マサシ うん、制限こそが、意味であり、意識なのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 業 の先に 劫
サトミ 我が描かれる、業って、どういうものかな?
メグミ 業とは、積み上げるほど、崩れ落ちるものよ。
サトミ どの者も、築き上げるけど、奪い取られるの?
メグミ 確かに、器が大きいほど、延ばされるけど、
それだけ、差が激しい、終わりを迎えるのよ。
サトミ 梵が画かれる、劫って、どういうものかな?
メグミ 劫とは、創り上げるほど、壊れ落ちるものよ。
サトミ どの物も、膨れ上がるけど、衰え消えゆくの?
メグミ 確かに、型が大きいほど、伸ばされるけど、
それだけ、形が広がり、終わりを向えるのよ。
サトミ 者にしても、物にしても、始まりを迎えると、
遅かれ早かれ、必ずや、終わりまで向かうの?
メグミ そうよ、そして、その終わりは、別の始まり。
また、始まりを迎えて、終わりまで向かうの。
サトミ 壊れるなら、創ったって、無駄なだけだし、
この様な、切りが無いこと、遣りたくないよ。
メグミ そっか、そう見えるなら、認めなくていいよ。
サトミ えっ、認めたくないと、認めなくてもいいの?
メグミ うふっ、その器に応じた、役が与えられるよ。
サトミ ……………………
CASE 三 神 一 体
サトシ 善性の時を司る、創造神は、どういう神かな?
マサシ 絶対の実在を司る、原理の神、ブラフマーさ。
サトシ 創造期に、説かれる宗教は、どんな教えなの?
マサシ 父なる神が、選民に戒律を説く、法の宗教さ。
サトシ 動性の時を司る、維持神は、どういう神かな?
マサシ 至福の歓喜を司る、慈愛の神、ヴィシュヌさ。
サトシ 維持期に、説かれる宗教は、どんな教えなの?
マサシ 子なる神が、世界に福音を説く、愛の宗教さ。
サトシ 暗性の時を司る、破壊神は、どういう神かな?
マサシ 最高の意識を司る、智慧の神、シヴァなのさ。
サトシ 破壊期に、説かれる宗教は、どんな教えなの?
マサシ 霊なる神が、終末に覚醒を説く、知の宗教さ。
サトシ つまり、時代が変わると、教義も換わるし、
主役を演じる神様さえ、移り変わるってこと?
マサシ うん、誰が偉いとか、何が終りとか無いのさ。
その時、その時で、必要な教えを修めるんだ。
サトシ もし、好き嫌いして、信じたい神だけ信じて、
他の神を、受け容れないと、どうなるのかな?
マサシ 心から、受け容れるまで、繰り返すだけだよ。
サトシ ……………………
CASE 劫のない業 と 業のない劫
サトミ 業と劫、どちらの方を、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 個に巡るもの、業って、どういうものかな?
メグミ 業とは、我を縛り付けて、移し変えるものよ。
サトミ 世に廻るもの、劫って、どういうものかな?
メグミ 劫とは、梵を縛り付けて、移し変えるものよ。
サトミ 業を重んじて、劫を軽んじると、どうなるの?
メグミ 劫のない業なんて、単なる非業に過ぎないよ。
サトミ じゃ、個の巡りだけ、世の廻りを見ないの?
メグミ そうよ、深く見ないと、因が無い様に見える。
サトミ 劫を重んじて、業を軽んじると、どうなるの?
メグミ 業のない劫なんて、単なる空劫に過ぎないよ。
サトミ じゃ、世の廻りだけ、個の巡りを見ないの?
メグミ そうよ、浅く見ないと、何も無い様に見える。
サトミ 業だけでは、梵を認めず、悟り難くなるし、
劫ばかりでは、我を認めず、悟り難くなるの?
メグミ そうよ、業と劫、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃ、業を介しながら、劫を解していくの?
メグミ うふっ、業を超えながら、劫を越えていくの。
サトミ ……………………!!