第六章 第十一話 対話編
CASE 善性 と 動性 と 暗性
マナミ ねぇ、グナ、性質って、どういうものなの?
マサシ 性質とは、空の器を彩る、三つの性質なのさ。
マナミ サットヴァ、善性って、どういうものなの?
マサシ 善性とは、兎にも角にも、善い性質のことさ。
マナミ ラジャスの、動性って、どういうものなの?
マサシ 動性とは、兎にも角にも、動く性質のことさ。
マナミ タマスなる、暗性って、どういうものなの?
マサシ 暗性とは、兎にも角にも、暗い性質のことさ。
マナミ う~ん、良く解らない、どういうことなの?
マサシ うん、三つの性質を、並列的に説明できない。
解かりやすく説くには、二つに分けるんだよ。
マナミ どれか一つを隠して、それを条件にした上で、
残る二つを現して、Aと非Aに切り分けるの?
マサシ そうさ、すると、グナの性質が浮かび上がる。
マナミ なるほど、グナは、性質を与えるものなのに、
それ自体に、性質が無いなんて、不思議だね。
マサシ すごいね、この面白さが、君は解かるのかい?
マナミ うん、解る、性質って、どこから来るのかな?
マサシ 一つを踏まえ、二つに分けた、関係性からさ。
マナミ ……………………!!
CASE サ ッ ト ヴ ァ
サトシ あのね、サットヴァは、どういうものかな?
マサシ それはね、三つのグナで、善性を司るものさ。
サトシ 善性が、生まれるとき、悪性が埋まれるの?
それでも、三つの性質に、悪性は無かったよ。
マサシ 条件として、タマスの性を、裏に隠したとき、
サットヴァが善性、ラジャスが悪性になるよ。
サトシ そっか、善性が強くなると、どうなるのかな?
マサシ 向上心があり、自制心があり、知性的になる。
サトシ じゃあ、善性が弱くなると、どうなるのかな?
マサシ 向上心がなく、自制心がなく、知性的でない。
サトシ 確かに、これらの性質が、善性に現れるけど、
善性、そのものに具わった、性質じゃないの?
マサシ そうさ、他の二つを介し、現れているだけさ。
サトシ じゃ、善性に偏らせる法は、どうして説くの?
マサシ 自ずと、善性に偏るものには、説かないし、
自ずから、悪性に偏るものだけ、解かれるよ。
サトシ じゃあ、地上に説かれている、善性の教え。
いずれは、解かれなくなる、日が来るのかな?
マサシ おっと、知性的で良いけどね、この話は終り。
サトシ ……………………
CASE ラ ジ ャ ス
サトシ あのね、ラジャスって、どういうものかな?
マサシ それはね、三つのグナで、動性を司るものさ。
サトシ 動性が、生まれるとき、鈍性が埋まれるの?
それでも、三つの性質に、鈍性は無かったよ。
マサシ 条件として、サットヴァを、裏に隠したとき、
ラジャスが動性に、タマスが鈍性になるのさ。
サトシ そっか、動性が強くなると、どうなるのかな?
マサシ 積極的になり、感情的になり、突発的になる。
サトシ そっか、動性が弱くなると、どうなるのかな?
マサシ 積極的でなく、感情的でなく、突発的でない。
サトシ 確かに、これらの性質が、動性に現れるけど、
動性、そのものに具わった、性質じゃないの?
マサシ そうさ、他の二つを介し、現れているだけさ。
サトシ じゃ、動性に偏らせる法は、どうして説くの?
マサシ 自ずと、動性に偏るものには、説かないし、
自ずから、鈍性に偏るものだけ、解かれるよ。
サトシ じゃあ、地上で説かれてない、動性の教え。
この世の、どこかでは、解かれているのかな?
マサシ おっと、積極的で良いけど、この話は終わり。
サトシ ……………………
CASE タ マ ス
サトシ あのね、タマスなんて、どういうものかな?
マサシ それはね、三つのグナで、暗性を司るものさ。
サトシ 暗性が、生まれるとき、明性が埋まれるの?
それでも、三つの性質に、明性は無かったよ。
マサシ 条件として、ラジャス性を、裏に隠したとき、
タマスが暗性に、サットヴァが明性になるよ。
サトシ そっか、暗性が強くなると、どうなるのかな?
マサシ 享楽的になり、停滞的になり、妥協的になる。
サトシ じゃあ、暗性が弱くなると、どうなるのかな?
マサシ 享楽的でなく、停滞的でなく、妥協的でない。
サトシ 確かに、これらの性質が、暗性に現れるけど、
暗性、そのものに具わった、性質じゃないの?
マサシ そうさ、他の二つを介し、現れているだけさ。
サトシ じゃ、暗性に偏らせる法は、どうして説くの?
マサシ 自ずと、暗性に偏るものには、説かないし、
自ずから、明性に偏るものだけ、解かれるよ。
サトシ ふ~ん、そんな歪んだ教えが、有るんだね。
それこそ、僕に関係ないし、どうでもいいや。
マサシ そうさ、妥協的で良いけどね、話は続くのさ。
サトシ ……………………
CASE 善性 の裏に 暗性
マナミ ねぇ、プラーナ、気って、どういうものなの?
マサシ 気とは、動性を用いて、流れているものだよ。
マナミ 気は、体の中に在る、管の中を流れているの?
マサシ そうさ、体と心を結び、体の中を流れるのさ。
マナミ この条件では、動性って、どういうものなの?
マサシ 動性とは、条件を司る、縁に流れる性質だよ。
マナミ この条件では、善性って、どういうものなの?
マサシ 善性とは、原因を司る、因に流れる性質だよ。
マナミ この条件では、暗性って、どういうものなの?
マサシ 暗性とは、結果を司る、果に流れる性質だよ。
マナミ 気に於いて、動性が強くなると、どうなるの?
マサシ 少しずつ、焦りに流れるから、気が早くなる。
マナミ 気に於いて、善性が強くなると、どうなるの?
マサシ 少しずつ、良くに流れるから、気が軽くなる。
マナミ 気に於いて、暗性が強くなると、どうなるの?
マサシ 少しずつ、慣れに流れるから、気が重くなる。
マナミ つまり、動性とは、気を動かすものだけど、
善性が強いと明るく、暗性が強いと暗くなる?
マサシ そうさ、こうして、因果を辿っていけるのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 善性 の先に 暗性
サトミ 良くなる性、善性って、どういうものかな?
メグミ 善性とは、動性で切ると、善く変わるものよ。
サトミ 飽くなる性、暗性って、どういうものかな?
メグミ 暗性とは、動性で切ると、悪く変わるものよ。
サトミ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
メグミ そもそも、動性とは、変化を司るものなの。
この世界を、変化で切ると、どうなると思う?
サトミ 良く変わるか、悪く変わるか、そう見えるよ。
メグミ 暗性と比べ、善性が優ると、どうなると思う?
サトミ 世の中が、より良い方に、変わると想うよ。
メグミ 善性と較べ、暗性が勝ると、どうなると思う?
サトミ 世の中が、より悪い方に、換わると想うよ。
メグミ 善性の段は、変り方が、善い方に向かうし、
暗性の階では、換り方が、悪い方に向かうの。
サトミ つまり、動性を、無意識に、隠していると、
意識的に、善性と暗性が、現れてくるわけね。
メグミ そうよ、善性と暗性の間を、動き続けている。
サトミ うん、解からなかったことが、分かったよ。
メグミ うふっ、もう、悪い方には、向かわないでね。
サトミ ……………………!!
CASE プ ラ ー ナ
サトシ あのね、プラーナって、どういうものかな?
マサシ それはね、体に流れている、気のことなのさ。
サトシ 人の体には、どのような、気が流れているの?
マサシ 主要なものは、五種の気が、流れているのさ。
サトシ ヴィヤナと、呼ばれる気って、どういうもの?
マサシ 全身を流れて、循環を司り、体を守るものさ。
サトシ ウダーナと、呼ばれる気って、どういうもの?
マサシ 咽喉に宿って、嘔吐を司り、上に流れるのさ。
サトシ プラーナと、呼ばれる気って、どういうもの?
マサシ 心臓に宿って、呼吸を司り、内に流れるのさ。
サトシ サマーナと、呼ばれる気って、どういうもの?
マサシ 腹部に宿って、消化を司り、熱く燃えるのさ。
サトシ アパーナと、呼ばれる気って、どういうもの?
マサシ 肛門に宿って、排泄を司り、下に流れるのさ。
サトシ 五種の気が、滞ってしまうと、どうなるの?
マサシ 身体の具合が、悪くなって、病気になるのさ。
サトシ う~ん、どれが乱れても、病気になるなら、
わざわざ、五つに分けたの、どういう事かな?
マサシ 苦しい時は、原因を知りたい、そういう事さ。
サトシ ……………………
CASE 暗性なき善性 と 善性なき暗性
サトミ 善性と暗性、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 良くなる性、善性って、どういうものかな?
メグミ 善性とは、動性を介すと、善いと解すものよ。
サトミ 飽くなる性、暗性って、どういうものかな?
メグミ 暗性とは、動性を介すと、悪いと解すものよ。
サトミ 善性を望み、暗性に臨まないと、どうなるの?
メグミ 暗性なき善性なんて、唯の貪欲に過ぎないよ。
サトミ じゃ、悪くなると思わず、善に捕われるの?
メグミ そうよ、善くなると想って、貪に囚われるよ。
サトミ 暗性を望み、善性に臨まないと、どうなるの?
メグミ 善性なき暗性なんて、只の愚痴に過ぎないよ。
サトミ じゃ、善くなると思わず、悪に捕われるの?
メグミ そうよ、悪くなると想って、痴に囚われるよ。
サトミ 善性だけでは、悪を認めない、貪を抱くし、
暗性ばかりでは、善を認めない、痴を擁くの?
メグミ うん、善性や暗性、そのどちらも、必要なの。
サトミ じゃあ、善性を究めて、暗性を極めていくの?
メグミ うん、善性を超えて、暗性を越えていくのよ。
サトミ ……………………!!