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物語編

第六章 第十四話 物語編

第六章    左道   と   右道
第十四話 楽を究める道 と 苦を極める道

 

幼馴染にして、好敵手である、親友の名は法徳。
彼は、女性は勿論のこと、男性も惚れる男であり、
義理堅く、正義感に溢れて、義侠心に篤い男だった。

 

彼は、老若男女を問わず、相手が誰であろうと、
機転の利いた会話で、笑わせ喜ばせるものだから、
いつも、彼の周りには、人の輪が出来上がっていた。

 

容色は麗しく、知性は優れて、品格は心地良い。
そんな彼を、同じ世代の娘らは、神格化していた。
彼に恋し、寄って来る女性は、枚挙に暇が無かった。

 

彼は、誘いを拒むことなく、甘く戯れはしたが、
決して、一線を乗り越え、恋に溺れはしなかった。
淡い恋を、適えもしなければ、傷つけもしなかった。

 

たとえ、絶世の美女と謳われる、娘であっても、
あるいは、器量に恵まれない、女の子であっても、
いつも、誠実に向き合って、友人の域を出なかった。

 

如何なる子に対しても、平等に接していたため、
不満を与えることも、怨恨を買うこともなかった。
誰とも深く交わらない、彼は、ますます偶像化した。

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