物語編
第一章 第二話 物語編
第一章 陽 と 陰
第二話 表に生まれる と 裏に埋まれる
異常に覆われた自分も、日常に追われる人々も、
何も知らないという点で、何も変りがない訳だが、
この事に気づいただけ、先に進んだのかもしれない。
無知を知らないという、知らせようのない無知。
この絶望的な無知を知り、実体なき恐怖を覚える。
以来、その恐怖たるや、意識から離れることがない。
一度でも覚えてしまうと、二度と忘れられない、
あらゆる実感をして、いかなる実体もない、恐怖。
実体が無いものが、斯くも実感を宿してしまうとは。
人々は、この恐怖を、絶対に認めようとしない。
目を背けるかのように、日々の実感に追われ続け、
その繰り返しの中に、意義を見とめたつもりになる。
私だって、幾度となく、忘れようと試みて来た。
確かに、忙しく過ごせば、意識の中に隠されるが、
無意識に、こちらを見つめる、あいつが眠っている。
ふと、我に返ったとき、あいつは蘇えって来る。
無意識に隠しただけ、更に強くなって襲い掛かる。
逃げ切れるものか、しかと見つめろと、迫って来る。