物語編
第六章 第二十話 物語編
第六章 祈念 と 怨念
第二十話 念を善く見る と 念を悪く見る
いや、その発想は無かったと、彼は一頻り笑い、
その後、真顔になって振り向き、私の方を向いた。
普段通り、軽快さは残していたが、神妙な顔だった。
『なぁ、智徳、俺たちの名に、恥じないために、
この件で、如何なる天命が、下ることになっても、
たとえ、最悪な結末でも、有り難く受け容れようぜ。』
『俺にも、お前にも、徳の名が与えられている。
徳とは、生まれながら、与えられた本性のままに、
真っ直ぐ、有り難く、すべて受け容れる器のことだ。』
『真理を巡って、自らの徳を傷つけるようでは、
俺達が真理を受け容れる、段階にないという訳だ。
試してくれた神にも悪いし、名をくれた親にも悪い。』
『これは、一生の約束、いや、神との契約だな。
真理のこと、在りのまま、受け容れられるまでは、
どんな結果も、受け容れて、器を広げるとしようぜ。』
そう言うと、我々の前方に、真理を見つけると、
抜け駆けして、彼女の処まで、駆け寄って行った。
この台詞を、足止めに使うとは、本当に困った奴だ。
まぁ、良い、あいつに、主導権を与えてやろう。
三人の、誰が倖せに為っても、我が幸せに思える。
そういう、仲間に恵まれた、それで充分じゃないか。