物語編
第六章 第二二話 物語編
第六章 正義 と 不義
第二二話 義を善く見る と 義を悪く見る
真理は、意表を突かれ、初め呆然としていたが、
強く抑え込まれた想いが、止め処なく溢れ始めた。
そして、法徳の方を向いて、涙を流して語り出した。
[今まで、彼方から、わたしに向けられていた、
ありとあらゆる軽口や、ありとあらゆる冗談達が、
すべて、愛から発されていたものだと、判りました。]
[あなたの愛は、軽やかに見えて、深くて強い。
水のように滑らか、飲む者によって、味が変わる。
その身を削って、背を押してくれ、本当に有り難う。]
[今日は、あなたの好意に、甘えさせて下さい。
いつか必ず、この日のお礼を、恩返ししますから。
あなたは、輪廻を掛けた悲願を、適えてくれました。]
[あなたが、道に迷っていたら、出口を示して、
あなたが、道に躓いていたら、助け起こしますね。
たとえ、如何なる形になろうと、近くから守ります。]
真理は、感謝を込めて、彼の両手を握り閉めた。
しばらく、眼を閉ざして、温もりを感じていたが、
涙を流して、両目を開くと、私の方へと振り向いた。