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物語編

第六章 第十九話 対話編

CASE 歓楽 の裏に 哀愁

 

マナミ 仙骨の車輪、動物界は、どういうものなの?
マサシ 動物界は、欲界の第五層、快楽の世界なのさ。
マナミ 快の良い所、歓楽って、どういうものなの?
マサシ 歓楽とは、歓びを迎えて、快で楽しむことさ。
マナミ 快を使って、充実を望んで、自ずと楽しむの?
マサシ 快を得る、快の喜び故に、突き進んで行くよ。
マナミ じゃあ、快楽を楽しむほど、快に捕われるの?
マサシ そうだよ、快を望むから、動物に臨んでいく。
マナミ 快の悪い処、哀愁って、どういうものなの?
マサシ 哀愁とは、喜びが去って、快で苦しむことさ。
マナミ 快に疲れて、寂寥に臨んで、自ずと苦しむの?
マサシ 快を失う、快の憂い故に、引き返して来るよ。
マナミ じゃあ、快楽に苦しむほど、快に囚われない?
マサシ そうだよ、快に厭くから、動物が空いてくる。
マナミ つまり、快楽で楽しんだ分、快楽で苦しめば、
    自ずから、動物の世界を、乗り越えられるの?
マサシ そうさ、動物界の仕組みを、学び終えるのさ。
マナミ それでも、楽しいときは、愉しんでこそなの。
マサシ そんなこと、言っていると、まだまだ先かな。
マナミ ……………………

 


 

CASE 歓楽 の先に 哀愁

 

サトミ 歓び楽しむ、歓楽って、どういうものかな?
メグミ 歓楽とは、快楽を持って、先に楽しむことよ。
サトミ 先に於いて、快を楽しむと、どうなるのかな?
メグミ 快の喜び故に、我が強くなり、多く望むのよ。
サトミ 更に多くの、快を求めると、どうなるのかな?
メグミ 前よりも、楽しみ難くて、苦しみが増えるの。
サトミ 愁い哀しむ、哀愁って、どういうものかな?
メグミ 哀愁とは、快楽を以って、後で苦しむことよ。
サトミ 後に於いて、快に苦しむと、どうなるのかな?
メグミ 快の憂い故に、我が弱くなり、寡く望むのよ。
サトミ 更に少ない、快を求めると、どうなるのかな?
メグミ 前よりも、苦しみ難くて、楽しみが殖えるの。
サトミ つまり、我が楽しめるなら、望みが増えて、
    殖えすぎ、我を苦しめるなら、望みが減るの?
メグミ そうよ、器に収まるまでは、楽しめるけど、
    多すぎて、器を溢れてくると、苦しめられる。
サトミ なるほどね、快に囚われて、快を望むかぎり、
    歓楽と哀愁を、繰り返し、行き来するわけね。
メグミ 浮れるほど、薄れてしまう、快の仕組みなの。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 仙 骨 チ ャ ク ラ

 

サトシ 仙骨に在る、チャクラは、どういうものかな?
マサシ 感情を介して、快を解する、二元の世界だよ。
サトシ 快に関して、善悪を分けると、どうなるの?
マサシ 歓楽と哀愁を、繰り返している、動物界だよ。
サトシ 快を善いと、捉えて行くほど、どうなるの?
マサシ 少しずつ、歓楽の道を進み、快を好いて行く。
サトシ 快を悪いと、捕えて来るほど、どうなるの?
マサシ 少しずつ、哀愁の道を戻り、快を嫌って来る。
サトシ 善や悪には、快を認めないと、どうなるの?
マサシ もう一度って、歓楽の道を、進んで逝くのさ。
サトシ 善も悪にも、快を見とめると、どうなるの?
マサシ もう十分って、節制の道に、昇って行くのさ。
サトシ 動物界では、快楽を知る、繰り返しだけど、
    肯い過ぎても、否み過ぎても、捕らわれるの?
マサシ うん、どちらに、偏り過ぎても、囚われるよ。
サトシ 快って、軽んじても、捕われてしまうんだね。
マサシ 必ず、苦痛に向うけど、快楽を重んじるのさ。
サトシ そっか、快に関して、巧い使い方が有るのか。
マサシ うん、それを悟るまで、動物に生れ変わるよ。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 哀愁なき歓楽 と 歓楽なき哀愁

 

サトミ 歓楽と哀愁、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 動物の入口、歓楽って、どういうものかな?
メグミ 歓楽とは、快に捕われて、快に浮れることよ。
サトミ 動物の出口、哀愁って、どういうものかな?
メグミ 哀愁とは、快に囚われて、快が薄れることよ。
サトミ 歓楽を望み、哀愁に臨まないと、どうなるの?
メグミ 哀愁なき歓楽なんて、動物の器に余るだけよ。
サトミ じゃ、浮れるだけでは、器を溢れてしまうの?
メグミ そうよ、苦しみが過ぎて、出口から逃げるよ。
サトミ 哀愁を望み、歓楽に臨まないと、どうなるの?
メグミ 歓楽なき哀愁なんて、動物の器に欠けるのよ。
サトミ じゃ、薄れるだけでは、器に至っていないの?
メグミ そうよ、楽しみが足りず、入口にも立てない。
サトミ 歓楽だけでは、快を楽しみ、動物に入って、
    哀愁ばかりでは、快に苦しみ、動物を出るの?
メグミ うん、歓楽と哀愁、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、歓楽を究めて、哀愁を極めていくの?
メグミ うん、歓楽を超えて、哀愁を越えていくのよ。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 歓楽極り て 哀情多し

 

サトミ あたし、楽しいことだけ、続いているとき、
    急に、虚しくなったり、寂しくなったりする。
メグミ 例えば、そんな風に感じるのは、どんなとき?
サトミ みんなと、お祝いで、浮かれ続ける時とか、
    盛り上がる、お祭りを、離れて眺める時とか。
メグミ 下り坂が、近づいた事が、見えて来るからよ。
    その幸せが、続かない事が、薄っすら解るの。
サトミ それなら、幸せなときは、どうすれば良いの?
メグミ その幸せを、周りの人々に、分け与えるのよ。
サトミ 只でさえ、必ず過ぎ去る、儚い幸せなのに、
    進んで、人に与えたら、早く消えるだけだよ。
メグミ そもそも、不幸とは、幸福が消えることなの。
    与えること喜べば、幸福が不幸に為らないの。
サトミ そっか、相対的な幸不幸を、越えるわけね。
メグミ うん、絶対的な幸福、つまり、極楽になるの。
サトミ えへっ、とても良いことを、教わっちゃった。
    長いこと、抱えて来た悩みが、消えちゃった。
メグミ うふっ、独りだけで、悦に浸っていないで、
    ちゃんと、他の人にも、分け与えるといいよ。
サトミ ……………………!!

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