物語編
第六章 第二八話 物語編
第六章 羅漢 と 世尊
第二八話 小乗を修める と 大乗を修める
次の瞬間、彼は、堕天して、悪魔の命を享けた。
神に愛され、人々に愛された、この美しい天使は、
天魔の形相で、父なる神に代り、天の配下を諫めた。
『我が使命は見えても、他の使命を見とめない。
無垢にして無智なる、愛すべき、善なる者たちよ。
いよいよ、禁断の実を、汝ら自身、食べる時が来た。』
『善が説かれると、悪が解かれると知るが良い。
汝らが、善人を愛すほど、悪人を憎むようになる。
大いなる善の味わいは、大いなる悪の苦しみを生む。』
『気軽に、言葉だけで、神の愛を説くではない。
曲解されて、この人界に、幼い愛が蔓延るだけだ。
慈悲を説けるのは、欲界を越えた、色界の菩薩のみ。』
『汝らが打ち捨てた、極悪の地を見に逝こうぞ。
汝らの中で、我と共に、獄に堕ちる者は居ないか。
欲に塗れ、善に酔い痴れた、責を負う者は居ないか。』
『半分は下って、我と共に、悪名を負うだろう。
半分は残って、我らを責めて、功名を追うだろう。
構わない、言わせておけ、周回遅れの戯言に過ぎん。』