物語編
第六章 第二九話 物語編
第六章 如去 と 如来
第二九話 真如へと去る と 真如から来る
次の瞬間、彼は、流転して、閻魔の命を受けた。
鬼に敬われ、人に畏れられた、この厳しい法王は、
憤怒の形相で、梵天の王に代り、地の人々を諫めた。
『我々が、捧げ難きを捧げ、認め難きを認めて、
やっと、手にした幸せを、おまえ達は奪い去った。
狂信者よ、何の権が有って、そんな非道を犯すのか。』
『貴様らは、神に愛され、特別とでも言うのか。
神を信じない、名無き者は、例外とでも言うのか。
主よ主よと、今から言うなら、彼らは生き返るのか。』
『この地に、愛情に満ちた、神など存在しない。
存在するのは、自業自得、冷徹なる天の法だけだ。
為した事は返る、因果応報、峻厳なる真の理だけだ。』
『貴様らが、真理を悟るまで、輪廻に幽閉する。
少しは苦しみ、その甘えた性根、叩き直すが良い。
どれだけ、菩薩が、尻拭いをして来たか、思い知れ。』
『しかし、安心しろ、我が父は、酷薄ではない。
依然として、貴様らを、甘やかす、天使も残こる。
甘えたいなら奴らに甘え、憎みたいなら我らを憎め。』