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物語編

第六章 第三一話 物語編

第六章    安定   と   安心
第三一話 不安ある平安 と 不安なき平安

 

普段なら、気持ち悪いと、振り払ってた処だが、
今日は、気の済むまで、好きなようにして貰った。
どれだけ、母に愛されているか、強く伝わって来る。

 

なぁ、おふくろは、辛くないか、幸せなのか?
自らも天涯孤独ながら、捨て子の俺を引き取って、
我が子のように育ててくれた、姉のような母だった。

 

俺を負わなければ、自分の幸せも追えただろう。
ただ、孤児を育てるだけの、人生にしてしまった。
済まないことをしたと、聞かずには居られなかった。

 

今日にも、俺は、師や友と共に、使命に向かう。
そうなれば、再び、母は天涯孤独になってしまう。
人生に二度も、孤独になる辛さを、母は味わうのか。

 

頭上に、母の重みを感じながら、返事を待った。
待っている間、母との記憶が、鮮やかに蘇えって、
俺の頬には、二人分の涙が、流れては落ちていった。

 

いつもは、冷静な人格で通った、自分だったが、
あらゆる過去から、あらゆる感情が呼び覚まされ、
俺は、時代を越えて、止まる事なき涙を流し続けた。

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