物語編
第六章 第三三話 物語編
第六章 同調 と 移調
第三三話 同じ波に似る と 違う波に似る
彼女は、彼ら二人を、兄弟のように育てて来た。
我が息子として、申し分ないほど、立派に育った、
彼らを優しく見つめ、涙を溢れさせ、厳しく言った。
[最後に、情を断ち切って、愛する者に言うわ。
貴方の想い、良く伝わるけど、それには喜べない。
独り善がりの、型の一言で、何万もの人々が苦しむ。]
[私を喜ばせるために、型を歪めてはいけない。
私は、行くなと言えません、迷わず行って下さい。
貴方達の母として、今日ほど、嬉しい日は無いです。]
最後の最後まで、悲しいほどに、強い人だった。
特別な対象や、一時の感情に、流される事がない。
大いなる自然が、人の形として、凝縮した様だった。
それを、無情と見る人も、いるかもしれないが、
自分から見れば、大いなる慈悲、そのものだった。
我々は、飛んでもない存在に、常に見守られていた。
母に別れを告げ、法友と共に、師の元に急いだ。
横目で、隣りを走っている、彼の姿を覗き見ると、
自分同様、出所が解からない、感慨が渦巻いていた。