第六章 第二六話 対話編
CASE 衆生 の裏に 菩薩
マナミ サットヴァ、善性って、どういうものなの?
マサシ 善性とは、善い物を望む、性質のことなのさ。
マナミ サットヴァ、衆生って、どういうものなの?
マサシ 衆生とは、善い物として、煩悩を望むものさ。
マナミ 衆生が望む、煩悩って、どういうものなの?
マサシ 煩悩とは、思いのままに、悩む境地のことさ。
マナミ ボーディ・サットヴァ、菩薩は、どんなもの?
マサシ 菩薩とは、善い物として、菩提を望むことさ。
マナミ 菩薩が望む、菩提って、どういうものなの?
マサシ 菩提とは、在りのままに、悟る境地のことさ。
マナミ 衆生にせよ、菩薩にせよ、サットヴァであり、
誰だって、自分にとっては、善い物を望むの?
マサシ そうさ、煩悩を善いと見ると、煩わしくなり、
逆に、菩提を善いと見ると、清々しくなるよ。
マナミ 初めは、煩悩を望んでも、苦しくなるから、
少しずつ、菩提に臨むよう、変わってくるの?
マサシ そうさ、煩悩を突き詰めると、菩提に為るよ。
マナミ 思いのまま、善を突き詰めても、良いわけね。
マサシ 自ずから、真に善い物が何か、解って来るよ。
マナミ ……………………!!
CASE 衆生 の先に 菩薩
サトミ 煩悩を求める、衆生って、何と呼ぶのかな?
メグミ 善性、すなわち、サットヴァって、呼ぶのよ。
サトミ 菩提を求める、菩薩って、何と呼ぶのかな?
メグミ 菩提の善性、ボーディ・サットヴァ、なのよ。
サトミ 衆生にしても、菩薩にしても、本質は善なの?
メグミ そうよ、誰もが、善い物を、求めているのよ。
サトミ どうして、衆生は、煩悩を善いと考えるの?
メグミ 体験が足りず、自他が違って、見えるからよ。
サトミ 利己を望むほど、衆生って、どうなるのかな?
メグミ 欲の世界を、巡り続けて、憂いが増えるのよ。
サトミ どうして、菩薩は、菩提を善いと考えるの?
メグミ 経験が満ちて、自他が等しく、見えるからよ。
サトミ 利他に臨むほど、菩薩って、どうなるのかな?
メグミ 苦の世界を、救い続けて、喜びが殖えるのよ。
サトミ 即ち、何が利になって、何が害となるのか、
これが、解らないと衆生、分かると菩薩なの?
メグミ うん、善を突き詰めて、衆生が菩薩になるの。
サトミ そっか、善の性って、本当に奥が深いのね。
メグミ うん、こうしてね、一つずつ突き詰めるのよ。
サトミ ……………………!!
CASE 衆生 という 菩薩
サトシ あのね、サットヴァは、どういうものかな?
マサシ サットヴァは、善なる性、良くを望むものさ。
サトシ 煩悩を望む、衆生って、どういうものなの?
マサシ 衆生とは、己を利すると、善いと見るものさ。
サトシ 欲を持って、我を助けると、どうなるのかな?
マサシ 先に得となり、後に損となる、悩みを抱くよ。
サトシ 煩悩の限り、善く為らない、それに気づくの?
マサシ そうだよ、善の使い方が、違っていたわけさ。
サトシ 菩提に臨む、菩薩って、どういうものなの?
マサシ 菩薩とは、他を利すると、善いと見るものさ。
サトシ 徳を以って、世を援けると、どうなるのかな?
マサシ 欲が徳となり、生が智となる、悟りを懐くよ。
サトシ 菩提の限り、悪く為らない、それに気づくの?
マサシ そうだよ、善の遣い方が、合っていたわけさ。
サトシ 智が無いと、善が支かえて、悪が生まれて、
智が具わると、善が使かえて、徳が産まれる。
マサシ 善の扱いを学ぶ、それこそ、欲界のテーマさ。
サトシ なるほど、今迄より、良く生きられそうだよ。
マサシ 菩薩は、そうして、欲と生を徳と智に変える。
サトシ ……………………!!
CASE 菩薩なき衆生 と 衆生なき菩薩
サトミ 衆生と菩薩、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 利己を司る、衆生って、どういうものなの?
メグミ 衆生とは、煩悩を持って、欲界を巡るものよ。
サトミ 利他を司る、菩薩って、どういうものなの?
メグミ 菩薩とは、菩提を以って、欲界を救うものよ。
サトミ 衆生を望み、菩薩に臨まないと、どうなるの?
メグミ 菩薩なき衆生なんて、幼稚な園に過ぎないよ。
サトミ じゃ、子供ばかりでは、秩序が生まれないの?
メグミ そうよ、成人が居ないと、幼児ばかりになる。
サトミ 菩薩を望み、衆生に臨まないと、どうなるの?
メグミ 衆生なき菩薩なんて、老人の国に過ぎないよ。
サトミ じゃ、成人ばかりでは、波乱が産まれないの?
メグミ そうよ、子供が居ないと、老人ばかりになる。
サトミ 衆生だけは、遊びたくても、遊べなくなり、
菩薩ばかりは、救いたくても、救えないのね。
メグミ うん、衆生と菩薩、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、衆生を負って、菩薩を追っていくの?
メグミ うん、衆生を究めて、菩薩を極めていくのよ。
サトミ ……………………!!