第六章 第二八話 対話編
CASE 羅漢 の裏に 世尊
マナミ アルハット、羅漢って、どういうものなの?
マサシ 羅漢とは、小乗を修めた、仏陀のことなのさ。
マナミ 自分という、特定の条件で、悟ったものなの?
マサシ 羅漢とは、一度だけ、山頂に登った段階だよ。
マナミ つまり、自分が辿った、道しか知らないの?
マサシ うん、折り返し、菩薩となり、山を下るのさ。
マナミ バガヴァン、世尊って、どういうものなの?
マサシ 世尊とは、大乗を修めた、仏陀のことなのさ。
マナミ 自他という、多様な条件で、悟ったものなの?
マサシ 世尊とは、何度でも、山頂に登った段階だよ。
マナミ つまり、自分が辿った、道を増やしていくの?
マサシ うん、繰り返し、菩薩として、山を上るのさ。
マナミ 一口に、仏陀と言っても、どれだけ登ったか。
どれだけ、智徳を修めたか、違いが有るのね。
マサシ そうさ、仏陀にも段階により、個性が有るよ。
マナミ なるほど、こんなこと、考えたこと無かった。
マサシ 確かに、偶然に思い付く、教えじゃないしね。
マナミ それなら、あなたは、どうして知っているの?
マサシ 僕には、それこそ、毎回の繰り返しだからさ。
マナミ ……………………!!
CASE 羅漢 の先に 世尊
サトミ 小乗の究み、羅漢って、どういうものかな?
メグミ 羅漢とは、輪廻を越えて、涅槃に至るものよ。
サトミ 味著と過患、両者を越えた、涅槃に到るの?
メグミ 器が狭く、他を切り捨て、一元に安らうのよ。
サトミ じゃあ、今生だけ悟っても、器が小さいまま?
メグミ うん、だから、智徳を修める、菩薩に為るの。
サトミ 大乗の極み、世尊って、どういうものかな?
メグミ 世尊とは、輪廻に臨んで、涅槃に至るものよ。
サトミ 輪廻と涅槃、両者を越えた、涅槃に到るの?
メグミ 器が広く、他を受け容れ、一元に安らうのよ。
サトミ じゃあ、何生でも悟るほど、器が大きくなる?
メグミ うん、いずれ、万物を収める、世尊に為るの。
サトミ つまり、羅漢に為ってから、世尊に成るまで、
菩薩として、衆生を救い、器を広げていくの?
メグミ そうだよ、涅槃に留まらず、輪廻に生まれて、
何回も、新たに解脱して、衆生を済度するの。
サトミ 毎回、無智を背負って、最初から悟り直すの?
う~ん、漸く悟ったのに、もったいなくない?
メグミ 繰り返したら、悟りでさえ、当り前になるよ。
サトミ ……………………!!
CASE 羅漢 と 菩薩 と 世尊
サトシ 供養に値す、羅漢って、どういうものかな?
マサシ 羅漢とは、仏陀の境地を、達成したものだよ。
サトシ 菩提を望む、菩薩って、どういうものかな?
マサシ 菩薩とは、仏陀の境地を、完成するものだよ。
サトシ 世界で尊い、世尊って、どういうものかな?
マサシ 世尊とは、仏陀の境地を、完成したものだよ。
サトシ う~ん、良く解らない、どういうことかな?
マサシ たとえば、仏陀の境地を、山頂に喩えると、
山頂に達すると達成で、山全体を知ると完成。
サトシ 上り下りを、繰り返して、全体像を修めるの?
マサシ うん、達成から完成までが、菩薩の行なのさ。
サトシ 何度も、山頂を目指して、気が遠くならない?
マサシ うん、だからこそ、他が登るのを手助けして、
他者の苦楽の経験を、我が経験に変えるのさ。
サトシ 何生も生まれ変わって、経験する筈のものを、
大勢の人を助けることで、一生で経験するの?
マサシ うん、他人が自分のように、見えて来るのさ。
サトシ 僕には、そのような日が、いつ訪れるのかな。
マサシ 僕も、そう思った日が、遠い昔に訪れたのさ。
サトシ ……………………!!
CASE 世尊なき羅漢 と 羅漢なき世尊
サトミ 羅漢と世尊、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 涅槃に至る、羅漢って、どういうものかな?
メグミ 羅漢とは、二元を越えて、一元に至るものよ。
サトミ 万物を宿す、世尊って、どういうものかな?
メグミ 世尊とは、万物を宿して、一元に居るものよ。
サトミ 羅漢を望み、世尊に臨まないと、どうなるの?
メグミ 世尊なき羅漢なんて、唯の隠遁に過ぎないよ。
サトミ じゃ、羅漢ばかりでは、籠り過ぎてしまうの?
メグミ そうよ、小さ過ぎるから、誰も会えなくなる。
サトミ 世尊を望み、羅漢に臨まないと、どうなるの?
メグミ 羅漢なき世尊なんて、只の畏怖に過ぎないよ。
サトミ じゃ、世尊ばかりでは、畏れ過ぎてしまうの?
メグミ そうよ、大き過ぎるから、誰も近づけないの。
サトミ 羅漢だけでは、小さ過ぎて、掬い難くなり、
世尊ばかりでは、畏れ多くて、救い難くなる?
メグミ うん、羅漢と世尊、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、羅漢を透して、世尊を徹していくの?
メグミ うん、羅漢を究めて、世尊を極めていくのよ。
サトミ ……………………!!