第六章 第三一話 対話編
CASE 軌跡 の裏に 奇跡
マナミ 表を辿る跡、軌跡って、どういうものなの?
マサシ 軌跡とは、非の付かない、現実を辿ることさ。
マナミ 裏を辿る跡、奇跡って、どういうものなの?
マサシ 奇跡とは、非に覆われる、現実を辿ることさ。
マナミ 現実にしても、非現実にしても、現実感なの?
マサシ うん、因果を辿るからこそ、実感が湧くんだ。
マナミ う~ん、良く解からないけど、どういうこと?
マサシ AならばBを、意識的に、感じているとき、
Aならば非Bを、無意識に、観じているのさ。
マナミ 現実の実感を、意識的に、覚えているとき、
非現実の実感を、無意識に、忘れているわけ?
マサシ 軌跡を辿って、現実の実感が強くなるほど、
奇跡が起きた時、非現実の実感が強くなるよ。
マナミ つまり、非現実は、非の付く現実なんだから、
現実が強くなるほど、非現実も強くなるのね。
マサシ うん、現実が無ければ、非現実も無いのさ。
マナミ つまり、軌跡が長いほど、奇跡も強くなるの?
マサシ うん、軌跡が無ければ、奇跡も無くなるのさ。
軌跡は、もう充分さ、後は、奇跡を認めなよ。
マナミ ……………………!!
CASE 軌跡 の先に 奇跡
メグミ 太陽が、東から昇っても、ただの軌跡だけど、
もし、西から昇ったら、すごい奇跡じゃない?
サトミ 奇跡よ、そんなこと、絶対に起こらないもん。
メグミ じゃ、その奇跡は、現実かな、非現実かな?
サトミ う~ん、非現実だからこそ、奇跡なんでしょ。
メグミ でも、非現実も起きれば、現実じゃないの?
つまり、非が付いただけの、現実に過ぎない。
サトミ ちょっと、良く解らない、どういうことかな?
メグミ 奇跡が起きて、強烈な実感が、生じるけど、
その実感は、起きる前から、高められている。
サトミ いつでも、東から昇っていた、軌跡が有り、
今度は、西から昇ってくる、奇跡が在るわけ?
メグミ うん、軌跡が無いところ、奇跡も無いのね。
奇跡は、裏に隠されている、現実の軌跡なの。
サトミ ふむ、何も無いところに、何かが起きたって、
それは、初めて見たものに、過ぎないわけね。
メグミ だからね、これって、凄い発見だと思わない?
サトミ なるほどね、たしかに、凄い奇跡だと想うよ。
メグミ うふっ、奇跡ってことは、知ってたんだけど。
サトミ ……………………!!
CASE 軌跡 という 奇跡
サトシ 表に現れる、軌跡って、どういうものかな?
マサシ 軌跡とは、意識的に辿る、当り前な跡なのさ。
サトシ 裏に隠れる、奇跡って、どういうものかな?
マサシ 奇跡とは、無意識に辿る、在り難い跡なのさ。
サトシ いつか、僕も目の前で、奇跡を見てみたいよ。
マサシ ほら、今も眼の前に、奇跡が現われているよ。
サトシ う~ん、おかしなこと、言わないで欲しいな。
どう見ても、有り触れた、光景しか見えない。
マサシ ひょっとして、客観的奇跡、というものが、
歴然として、存在していると、思っているの?
サトシ 当り前さ、太陽が二つになれば、奇跡だもん。
マサシ 日が一つが、当り前なら、確かに奇跡だよ。
太陽が二つが、当り前なら、単なる軌跡だね。
サトシ じゃあ、見る人が変れば、奇跡も変わるの?
マサシ うん、見方を変えれば、軌跡は奇跡に換わる。
つまり、有り勝ちの中に、在り難いを認める。
サトシ じゃ、当り前に感じる、この意識を変えれば、
すべて、在り難く観じる、奇跡を起こすのか。
マサシ ほら、今も眼の前には、奇跡が現れているよ。
サトシ ……………………!!
CASE 奇跡なき軌跡 と 軌跡なき奇跡
サトミ 軌跡と奇跡、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 表を認める、軌跡って、どういうものかな?
メグミ 軌跡とは、意識に現れる、現在に気づくもの。
サトミ 裏を認める、奇跡って、どういうものかな?
メグミ 奇跡とは、無意識に潜む、未来を築くものよ。
サトミ 軌跡を望み、奇跡に臨まないと、どうなるの?
メグミ 奇跡なき軌跡なんて、唯の所見に過ぎないよ。
サトミ じゃ、表を見とめても、深く見えないのかな?
メグミ そうよ、表だけ見るから、裏が見えてこない。
サトミ 奇跡を望み、軌跡に臨まないと、どうなるの?
メグミ 軌跡なき奇跡なんて、只の初見に過ぎないよ。
サトミ じゃ、裏を見とめても、裏に見えないのかな?
メグミ そうよ、初めて見るから、表に見えてしまう。
サトミ 軌跡だけでは、消えるまで、有り難くなく、
奇跡ばかりでは、現われても、在り難くない。
メグミ うん、軌跡と奇跡、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、軌跡を負って、奇跡を追っていくの?
メグミ うん、軌跡を究めて、奇跡を極めていくのよ。
サトミ ……………………!!