物語編
第六章 第三七話 物語編
第六章 利欲 と 法欲
第三七話 利に塗れる欲 と 利を越える欲
そう言うと、主は、智徳と法徳の二人を残して、
その広間から出るように、他の弟子たちに言った。
その言に、誰もが従ったが、独り順わない者が居た。
主は、優しく厳しい顔で、彼に、このように言った。
〔どうした、わたしの言葉に、従がえないのか。
今日という日は、型の創り上がる、祝福された日。
今から逆らおうとすれば、後にも逆らうことになる。〕
彼は、畏れるも怖れずに、主に、このように言った。
〈畏れながら、主よ、わたしは立ち去れません。
わたしは、民を救うために、法を修めて来ました。
主の済度に、加われる事なく、退く事は在りません。〉
〔まだ、君は耐えられない、加わるべきではない。〕
〈しかし、主よ、求めよと仰ったのは、あなたです。〉
〔何が起ころうと、決して、退かないと言えるか。〕
〈はい、法が与えられるまで、退く事は在りません。〉
主は、悲しむも喜びつつ、彼に、このように言った。
〔分かった、君の願いは、必ず聞き届けられる。
自ら選んだ道だ、自ら罪を負わなければならない。
今は、従いなさい、後で必ず、私が迎えに行くから。〕