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物語編

第六章 第三六話 対話編

CASE 正法 の裏に 末法

 

マナミ 正なる時代、正法って、どういうものなの?
マサシ 正法とは、正なる教えが、世に広まる時だよ。
マナミ 正しい法が、世に広がると、どうなるのかな?
マサシ 世の中に、善が多くなり、悪が少なくなるよ。
マナミ 善を積んで、楽が増えてくると、どうなるの?
マサシ 慢が生まれて、過ちを認めず、誤って行くよ。
マナミ 誤まる時代、末法って、どういうものなの?
マサシ 末法とは、邪なる教えが、世に広まる刻だよ。
マナミ 邪まな法が、世に広がると、どうなるのかな?
マサシ 世の中に、悪が多くなり、善が少なくなるよ。
マナミ 悪を積んで、苦が殖えてくると、どうなるの?
マサシ 信が生まれて、過ちを認めて、正して行くよ。
マナミ 正しく過ぎても、慢が生まれて、誤まるし、
    誤り過ぎても、苦が生まれて、謝ってしまう。
マサシ そうさ、何が正しくて、何が誤まりなのか。
    一概には、分からないし、言い切れないのさ。
マナミ う~ん、そういうことなら、どうすべきなの?
    このままなら、何を修めても、誤りになるの。
マサシ 逆だよ、どちらも正しいと、受け容れるのさ。
マナミ ……………………!!

 


 

CASE 正法 の先に 末法

 

サトミ 欲を修める、正法って、どういうものかな?
メグミ 正法とは、善行を勧める、正しい時代なのよ。
サトミ 善の時代に、善行を説くと、どうなるのかな?
メグミ 沁み込む様に、受け容れられ、世に広まるよ。
サトミ 善が過ぎて、楽ばかりになると、どうなるの?
メグミ 善人でさえも、独り善がりな、慢を抱くのよ。
サトミ 欲に溺れる、末法って、どういうものかな?
メグミ 末法とは、悪行を進める、邪なる時代なのよ。
サトミ 悪の時代に、悪行を解くと、どうなるのかな?
メグミ 染み込む様に、盗り入れられ、世に広まるよ。
サトミ 悪が過ぎて、苦ばかりになると、どうなるの?
メグミ 悪人でさえも、悔いて改める、信を抱くのよ。
サトミ じゃ、善行ばかりでも、善人は導けないし、
    反対に、悪行ばかりでも、悪人は誘えないの?
メグミ 善き行を、正法に勧めると、末法に進むし、
    悪しき行を、末法に奨めると、正法に進むよ。
サトミ 認め難いけど、正法にせよ、末法の世にせよ、
    後から、大事になる事を、修めているわけね。
メグミ うん、それを認めたら、総てが正法になるよ。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 正法 と 像法 と 末法

 

サトシ 法が現れる、正法って、どういうものかな?
アツシ 正法とは、仏が表に出て、真理が蘇える時だ。
サトシ 具体的には、正法とは、どういう時代なの?
アツシ 正法には、仏が有り、僧が有って、法が有る。
サトシ 法が衰える、像法って、どういうものかな?
アツシ 像法とは、僧が表に出て、真理が隠れる時だ。
サトシ 具体的には、像法とは、どういう時代なの?
アツシ 像法には、仏が消え、僧が残って、法が残る。
サトシ 法が廃れる、末法って、どういうものかな?
アツシ 末法とは、法が表に出て、真理が滅びる時だ。
サトシ 具体的には、末法とは、どういう時代なの?
アツシ 末法には、仏が消え、僧が消えて、法が残る。
サトシ つまり、仏が消えると、業が入り込むから、
    僧も法も、廃れて行って、消えて逝くのかな?
アツシ そうだ、言行が一致しない、業が入り込む。
サトシ それなら、末法の時には、どう悟れば良いの?
アツシ 背景が消された、道理を辿り、悟るしかない。
サトシ そっか、人物に頼らず、論理だけに拠るのか。
アツシ ああ、外を見渡した処で、仏は居ないからな。
サトシ ……………………!!

 


 

CASE 末法なき正法 と 正法なき末法

 

サトミ 正法と末法、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 法が生じる、正法って、どういうものかな?
メグミ 正法とは、善行が栄えて、悪行が衰える時よ。
サトミ 法が滅びる、末法って、どういうものかな?
メグミ 末法とは、悪行が栄えて、善行が衰える刻よ。
サトミ 正法を望み、末法に臨まないと、どうなるの?
メグミ 末法なき正法なんて、唯の天界に過ぎないよ。
サトミ 楽が生じて、満が招じる、だけじゃだめなの?
メグミ 欲が満ちても、慢に嵌れば、堕ちてしまうよ。
サトミ じゃ、楽が生じるから、慢を招じるだけなの?
メグミ そうよ、信が滅びていき、楽に溺れるだけよ。
サトミ 末法を望み、正法に臨まないと、どうなるの?
メグミ 正法なき末法なんて、只の地獄に過ぎないよ。
サトミ じゃ、苦が生じるから、信を招じるだけなの?
メグミ そうよ、法が滅びていて、苦に塗れるだけよ。
サトミ 正法だけでは、楽が生じて、信を招じないし、
    末法ばかりでは、信を招じて、楽が生じない。
メグミ うん、正法と末法、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、正法を究めて、末法を極めていくの?
メグミ うん、正法を超えて、末法を越えていくのよ。
サトミ ……………………!!

 


 

CASE 埋 蔵 経 典 壱

 

マナミ ねぇ、テルマ、埋蔵経は、どういうものなの?
マサシ 埋蔵経とは、時が来るまで、隠された因果さ。
マナミ じゃ、カーラ、「時」は、どういうものなの?
マサシ 時とは、因果が重なり、条件が変わることさ。
マナミ じゃ、カルマ、「業」は、どういうものなの?
マサシ 業とは、条件に合ってない、因果のことだよ。
マナミ じゃ、ダルマ、「法」は、どういうものなの?
マサシ 法とは、条件に合っている、因果のことだよ。
マナミ カルマも、時が満ちれば、ダルマになるし、
    ダルマでも、時が過ぎれば、カルマになるの?
マサシ うん、カーラは、条件を、変えていくからね。
マナミ たとえ、ダルマでも、条件が合わないときは、
    時が来るまで、隠しておくのが、テルマなの?
マサシ そうさ、時代を変える、深遠なダルマほど、
    好奇心に、晒さないよう、深い意識に埋める。
マナミ 条件が揃い、縁が有る人に、明かされるの?
マサシ うん、相応しい「場」が、自然に生じるのさ。
マナミ あなた、見て来たのね、少し私にも教えて。
マサシ そんなのは「場」じゃないよ、唯の好奇心さ。
マナミ ……………………

 


 

CASE 埋 蔵 経 典 弐

 

サトミ ねぇねぇ、埋蔵経典、持っているんでしょ。
    あたしにも、ちょっと、見せてくれないかな。
メグミ もちろん、良いけど、勘違いしているでしょ。
    意地悪して、どこかに、隠した訳じゃないよ。
サトミ うんうん、あたしも、それくらい知ってるよ。
    必要な、時が来るまで、隠してあるんだよね。
メグミ うん、さらに言えば、何処にも隠してないの。
    つまり、心から望めば、誰でも見られるのよ。
サトミ えっ、見たいと思ったら、誰でも見られるの?
メグミ でもね、エゴが嫌がるから、誰も求めないの。
サトミ どこかに、誰かが隠している、訳じゃなくて、
    自分の、意識の奥深くに、自ら隠しているの?
メグミ うん、エゴよりも深い、心の奥から求めれば、
    時が訪れているから、自然に解かれるはずよ。
サトミ どうして、あたしには、解かれていないの?
メグミ それは、心の底から、求めないからじゃない?
サトミ じゃ、求めているだけ、少しくらい見せてよ。
メグミ うふっ、ほら、それって、求めてない証拠よ。
    本心から、求める人は、そんな交渉しないよ。
サトミ ……………………

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