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物語編

第一章 第五話 物語編

第一章   主体   と   客体
第五話 意識が現れる と 意味が表れる

 

何時からだろうか、私は、老師の元を訪れたい、
否、訪れなければならない、という思いが生じた。
そんな私の想いを知ると、誰もが、それに反対した。

 

彼らが、私を引き留めてくるのは、良く解かる。
老師を訪ねた者らは、漏れなく、壊されるからだ。
従がう者は世間を、逆らう者は心を、完膚なきまで。

 

大事な物が有る者には、かの老師は危険だろう。
しかし、大事な物を、すでに失った者には如何だ。
壊される恐れが無いだけ、冷静に見とめられないか。

 

幸だろうか、不幸だろうか、私には何にもない。
偶然だろうか、必然だろうか、私が行くしかない。
そんな使命感に似た、好奇心が抑えられなくなった。

 

老師に関しては、様々な風聞が行き交っている。
老師を見る人の数だけ、老師の姿が存在している。
何も持たない私が行けば、老師の正体が解るだろう。

 

明日、会いに行こうと思うと、友人に告げたら、
案の定、愚かな真似はするなと、引き留められた。
老師にしても、友人にしても、総て我が意の表れだ。

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