第六章 第三九話 対話編
CASE 順道 の裏に 逆道
マナミ 光に順う道、順道って、どういうものなの?
マサシ 順道とは、光の中を歩む、善を司る道なのさ。
マナミ 世に従がう、光明を進むと、どうなるのかな?
マサシ 光の道は、先に進むほど、人から称賛される。
マナミ 闇に従う道、逆道って、どういうものなの?
マサシ 逆道とは、闇の中を歩む、悪を司る道なのさ。
マナミ 世に逆らう、暗黒を進むと、どうなるのかな?
マサシ 闇の道は、先に進むほど、人から非難される。
マナミ う~ん、闇の道が要るのは、どうしてなの?
光の道があれば、それだけで、十分じゃない?
マサシ いや、光しかないと、意味が生まれて来ない。
闇があってこそ、この世に、意味が生まれる。
マナミ 誰かが、闇を負わないと、意味が壊れるの?
マサシ うん、器の大きい魂が、闇を負っているから、
人々は、この世界は、経験が出来ているのさ。
マナミ そもそも、闇が無ければ、苦も無いんでしょ。
闇なんて要らないの、光だけの世界で良いの。
マサシ いや、そうすると、この世の意味が無くなる。
マナミ それで、良いと思う、闇なんて創らないでよ。
マサシ ……………………
CASE 順道 の先に 逆道
サトミ 薬を浴びる、順道って、どういうものかな?
メグミ 順道とは、世を救うため、善を演じる道だよ。
サトミ 善を演じて、他を導くほど、どうなるのかな?
メグミ 人に好かれて、善を積むから、楽しくなるよ。
サトミ 毒を浴びる、逆道って、どういうものかな?
メグミ 逆道とは、世を救うため、悪を演じる道だよ。
サトミ 悪を演じて、他を誘うほど、どうなるのかな?
メグミ 人に嫌われて、悪も積むから、苦しくなるよ。
サトミ 順道と逆道、どちらの道が、難しい道なの?
メグミ それは、もう、圧倒的に、逆の道の方なのよ。
菩提心の、権化である、菩薩の中の菩薩だけ。
サトミ 煩悩のため、逆に進むと、どうなるのかな?
メグミ 我が為に、他を攻めるから、悪を積んでいく。
サトミ 菩提のため、逆に進むと、どうなるのかな?
メグミ 我を忘れ、他を責めるから、徳を積んでいく。
サトミ つまり、少しでも我が入れば、極悪になるの?
メグミ うん、完全に衆生のために、悪を演じるのよ。
サトミ あたし、絶対に無理だよ、近づきたくない。
メグミ じゃ、あたしが行くね、人に負わせられない。
サトミ ……………………
CASE 乳 海 撹 拌
サトシ あのね、乳海撹拌って、どういう神話かな?
マサシ 善神と悪神が、協力して、欲界を救う話だよ。
サトシ 欲界の象徴である、須弥山に龍を巻き付けて、
その頭を悪神が、その尾を善神が引いたんだ。
マサシ 善と悪が分かれて、グルグルと回り続けたら、
引き裂かれる苦しみで、龍が毒を吐いたのさ。
サトシ 口から出る毒で、悪神が苦しんでいる間に、
尻尾から出た薬を、善神が取って行ったんだ。
マサシ じゃ、質問だよ、頭と尾、どっちを持ちたい?
サトシ う~ん、そんなの、尾の方に決まっているよ。
同じことをしたのに、得た物は正反対だもん。
マサシ でも、全ての神が、尾の方を持ってしまうと、
欲界を、回すことが、出来なくなるけど良い?
サトシ 構わない、誰か遣って、僕は遣りたくないよ。
マサシ でも、総ての神が、利己的に考えてしまうと、
欲界を、救うことが、出来なくなるけど良い?
サトシ 構わない、誰か遣って、僕は遣りたくないよ。
マサシ ここで、質問さ、どっちの方が、器が大きい?
毒を受け容れた悪神か、薬を奪い取った善神。
サトシ ……………………
CASE 逆道なき順道 と 順道なき逆道
サトミ 順道と逆道、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 善を演じる、順道って、どういうものかな?
メグミ 順道とは、自我を修めて、善を重ねる道だよ。
サトミ 悪を演じる、逆道って、どういうものかな?
メグミ 逆道とは、自我を奉げて、徳を重ねる道だよ。
サトミ 順道を望み、逆道に臨まないと、どうなるの?
メグミ 逆道なき順道なんて、唯の天道に過ぎないよ。
サトミ じゃ、善人しか居ない、天国の様なものなの?
メグミ そうよ、苦しみに欠けて、覚りから遠くなる。
サトミ 逆道を望み、順道に臨まないと、どうなるの?
メグミ 順道なき逆道なんて、只の魔道に過ぎないよ。
サトミ じゃ、悪人しか居ない、地獄の様なものなの?
メグミ そうよ、楽しみに欠けて、悟りから遠くなる。
サトミ 順道だけでは、善に偏って、覚れなくなり、
逆道ばかりでは、悪に偏って、悟れなくなる?
メグミ うん、順道と逆道、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、順道を究めて、逆道を極めていくの?
メグミ うん、順道を超えて、逆道を越えていくのよ。
サトミ ……………………!!