第六章 第六十話 対話編
CASE 神 の 計 画 書 壱
サトシ あのね、秘密結社の札は、どういうものかな?
マサシ それはね、未来を予言する、カードのことさ。
サトシ そもそもさ、秘密結社は、どんなところなの?
マサシ 秘密裏に、人類を支配して、誘導する組織さ。
人類は、彼らの計画通り、統治されているよ。
サトシ 変だよね、秘匿したいのか、公開したいのか。
彼らが、如何したいのか、良く分からないよ。
マサシ どちらも、支配のためには、必要なことだよ。
彼らは、存在は秘めても、計画は明かすのさ。
サトシ どうして、結社の存在感は、消そうとするの?
マサシ 存在すると、確定すると、同列になるからさ。
サトシ 誘うもの、導かれるものが、同等になるの?
マサシ 同じ次元に、落し込まれると、不便が増える。
サトシ どうして、組織の計画表は、示そうとするの?
マサシ 肯定すると、否定するが、同意になるからさ。
サトシ 起きても、起こらなくても、同義になるの?
マサシ 同じ対立に、巻き込むことが、本当の目的さ。
サトシ いつでも、君の言うことは、良く解らないよ。
マサシ このように、同じ場に立つと、誘導し難いね。
サトシ ……………………
CASE 神 の 計 画 書 弐
サトシ 秘密結社が、存在を隠すのは、どうしてかな?
マサシ 存在を解くと、因果の中に、収められるのさ。
サトシ 因果の中に、存在が納まると、どうなるの?
マサシ 概念と化して、記号として、扱われてしまう。
サトシ 実体として、扱えるなら、決定できるけど、
その逆に、扱えないものは、決定できないの?
マサシ 在るものか、無いものか、確定しないから、
物理的にでも、精神的にも、支配を受けない。
サトシ 世の人々に、Aと思われたら、どうするの?
マサシ Aであるとも、Aではないとも、想わないよ。
サトシ 世の人々に、Bと思われたら、どうするの?
マサシ Bであるとも、Bではないとも、想わないよ。
サトシ 世の人から、何と言われても、気に留めず、
放って置いて、好きな様に、言わせて置くの?
マサシ Aだろうが、Aでなかろうが、全く構わない。
それ故に、この点に関して、優位に立つのさ。
サトシ 彼らは、優位を保つため、関係を持たない。
実際の処、秘密結社なんて、寂しい存在だよ。
マサシ そのように、何と言われても、気に止めない。
サトシ ……………………
CASE 神 の 計 画 書 参
サトシ 秘密結社が、計画を示すのは、どうしてかな?
マサシ 計画を説くと、因果の中に、収められるのさ。
サトシ 因果の中に、人々が納まると、どうなるの?
マサシ 概念と化して、記号として、扱われてしまう。
サトシ 何月何日に、何かが起こると、人々に説くと、
Aが起こるか、Aが興らないか、捕われるの?
マサシ Bが興るや、Cが起こるでも、構わないのに、
Aであるのか、Aでないのかに、囚われるよ。
サトシ 世の人々は、Aであることに、執着するけど、
彼ら自身、Aであることに、頓着してないの?
マサシ Aだろうが、Aでなかろうが、全く構わない。
それ故に、この点に関して、優位に立つのさ。
サトシ つまり、Aを起こすぞと、知らせておいて、
必ずしも、Aを興こしたい、訳じゃないのか。
マサシ それのみか、Aが起こるぞと、待ち構えると、
嘲笑って、Aを興こさずに、予想を裏切るよ。
サトシ 秘密結社は、そんな事をして、何をしたいの?
何から何まで、人に委ねて、意志がないよね。
マサシ 彼らの器が、計り知れなくて、僕は恐ろしい。
サトシ ……………………
CASE 神 の 計 画 書 肆
サトシ どうしても、欲が無い様には、見えないんだ。
秘密の結社は、我の塊りで、欲の固まりだよ。
マサシ 悪の組織は、堕天使から、小悪人に至るまで、
多種多様なる、段階が在り、階層が有るのさ。
サトシ 悪の階段の、頂点に座すのは、どんな悪なの?
マサシ 魔であり、密命に仕かえる、貴い天魔なのさ。
サトシ 悪の段階の、底辺に坐すのは、どんな悪なの?
マサシ 人であり、悪霊に憑かれた、卑しい悪人だよ。
サトシ 善人の間に、器の違いが、現存するように、
悪者の間にも、格の違いが、存在しているの?
マサシ その通りさ、良くを越えると、器が広がり、
その逆に、良くが肥えると、器が狭くなるよ。
サトシ 僕が考える、欲の塊に見える、悪者なんて、
組織の中では、底辺も底辺、下っ端なのかな。
マサシ 徳が高いと、欲を操れる、天魔に繋がるし、
徳が低いほど、欲で釣れる、悪霊に繋がるよ。
サトシ 秘密結社が、欲の塊りに、僕が見えるのは、
僕自身が、欲の固まりだと、君は言いたいの?
マサシ 少なくとも、頂点の秘密とは、全く縁がない。
サトシ ……………………
CASE 神 の 計 画 書 伍
サトシ 善で繋がる、表側の社会が、存在するよう、
悪まで繋がる、裏側の組織が、存在するのか。
マサシ 表に現れる、善意で繋がる、世界があれば、
裏に隠される、悪意で繋がる、世界があるよ。
サトシ 更に言えば、善は善だけで、繋がるばかりか、
あろうことか、善は悪までも、繋がるわけだ。
マサシ 卑近な善は、低俗なる悪と、隣り合せであり、
高遠なる善は、高尚なる悪と、隣り合せだよ。
サトシ 欲が深いと、善でも悪でも、器が小さくなり、
似た者同士で、引き寄せ合い、剋し合うのか。
マサシ 徳が高いと、悪でも善でも、器が大きくなり、
善か悪か、定かならない、境地に至るわけさ。
サトシ う~ん、引き合うどころか、混ざり合うの?
そもそも、善と悪の差なんて、無かったわけ?
マサシ その真相を、時間を掛けて、人々に悟らせる。
それこそ、神様の計画であり、天魔の役目さ。
サトシ 悪を憎んで、善を慈しむ善人が、真逆である、
善を悪み、悪を愛する悪者と、同じ訳がない。
マサシ 同じにしか、見えない僕と、君は交わらない。
サトシ ……………………
CASE 神 の 計 画 書 陸
サトシ 悪者の彼らが、善人の僕らと、同じ訳ないよ。
マサシ 君を映して、同じ事をする、影の様なものさ。
サトシ 彼らはね、生贄を奉げて、悪魔に仕えている。
マサシ 君らは、賽銭を捧げて、神様を使っているよ。
サトシ 彼らはね、若さのために、性を食い散かすよ。
マサシ 君らは、受けのために、生を喰い散かすよね。
サトシ 彼らはね、人間を飼って、人命を弄んでいる。
マサシ 君らは、動物を狩って、生命を玩んでいるよ。
サトシ 彼らはね、良心が無くて、手段を選ばないよ。
マサシ 君らは、制裁が亡かったら、手法を択ばない。
サトシ 彼らはね、自分が特殊と、思い込んでいるよ。
マサシ 君らも、自身が特別と、想い込んでいるよね。
サトシ 彼らはね、国際を歌って、伝統を毀している。
マサシ 君らは、国家を謡って、統制を壊しているよ。
サトシ 彼らはね、平等を布いて、個人を顧みないよ。
マサシ 君らは、自由を強いて、他人を省みないよね。
サトシ 彼らとは、日が当たった、僕らの陰であり、
僕らに、非が当たった、僕らの隠れた姿なの?
マサシ そのうち、君らの方こそ、彼らの影になるよ。
サトシ ……………………
CASE 神 の 計 画 書 漆
サトシ 確かに、善人の僕らは、社会の法を守って、
人として、善良に生きて、邪悪に活きてない。
マサシ しかし、君らの善とは、人としての善であり、
人でない、外から見ると、善とは言えないよ。
サトシ 僕らは、人間の存在が、特別と思っている。
それ故に、人には優しく、他には厳しくなる。
マサシ 彼らは、人類の存在が、特殊と想ってない。
それ故に、人には厳しく、自らに優しくなる。
サトシ 僕らが、知らない内に、自らを持ち上げて、
我の欲が、暴走するのを、彼らが捻じ伏せる。
マサシ 徳が低くて、欲が多ければ、強く押えられ、
徳が高く、欲が寡ければ、弱く抑えられるよ。
サトシ じゃあ、欲が無ければ、何も押えられない。
そもそも、彼らは僕らに、関って来れないの?
マサシ 我を超えて、欲を越えたら、神に還るから、
天の魔でさえ、手が届かずに、憑り付けない。
サトシ 僕らの方が、彼らの存在を、忌み嫌うから、
彼らの法まで、僕らの存在を、厭い悪むのか、
マサシ 魔の存在は、君の影であり、君の鏡だからね。
サトシ ……………………
CASE 神 の 計 画 書 捌
サトシ 僕らは、自分の存在こそ、特別と考えるから、
我だけが、正しいと思って、光を追っている。
マサシ 彼らは、自身の存在こそ、特級と考えるから、
我ならば、許されると想い、闇を負っている。
サトシ 僕らが、差し控えないで、光を浴びるから、
足元から、僕らの影として、彼らが伸びるの?
マサシ 我を照らす、光が強いと、闇は深くなるし、
罪が重なって、我が強いと、闇は深くなるよ。
サトシ 光を狭めて、我だけ照らせば、陰が濃くなり、
光を広げ、他まで照らせば、影が薄くなるの?
マサシ 罪を増やし、我を徹せば、陰が濃くなるし、
罪を減らして、我を透せば、影が薄くなるよ。
サトシ なるほどね、我だけ正しくて、他は誤まりと、
罪を重ねると、影が伸びて、闇が深くなると。
マサシ その通りさ、我が是しいよう、他も正しいと、
罪を改めると、魔が消えて、神が現れてくる。
サトシ 悪の魔とは、神が顕れてくる、間に過ぎない。
あくまで、神を覚えるまで、我を鍛えるもの。
マサシ 神に代わり、君に憑いて、罪を教えるものさ。
サトシ ……………………
CASE 神 の 計 画 書 玖
サトシ あくまでも、人類を真似て、振る舞うだけ。
悪者の彼らは、善人の僕らの、影に過ぎない。
マサシ 正なる神は、思いのままに、君らにさせて、
同じ様に、想いのままに、彼らにさせている。
サトシ 例えば、動物に対して、僕らが接するよう、
鏡の様に、人類に対して、彼らも接するのか。
マサシ 確かに、自らは明るく、彼らは暗いけれど、
それこそ、自らに限って、照した証しなのさ。
サトシ 光りを、彼らに当てて、深層を見てみれば、
自ずから、僕らと同じと、真相に気づけるの?
マサシ 真相は、現在の彼らは、未来の君らであり、
その逆に、現実の君らは、過去の彼らなのさ。
サトシ 魔が入って、長い間があり、真逆に見えても、
根本では、彼らも僕らも、何も変ってないの?
マサシ 我らこそが、神に選ばれて、他と異なると、
思い込み、罪を改めない処が、全く同じだよ。
サトシ 正なる神は、僕らと彼らを、鉢合せにして、
似た者同士は、互いに学べと、仕向ているの?
マサシ 罪に気づき、悔い改めた者から、卒業させる。
サトシ ……………………
CASE 神 の 計 画 書 拾
サトシ 後輩たる、善人の僕らは、彼らから学んで、
先輩である、悪人の彼らは、僕らから学ぶの?
マサシ 君たちは、未来の姿から、慢心を省るべきで、
彼らは、過去の姿から、初心を顧るべきだよ。
サトシ このまま、改めなければ、彼らの様になるし、
彼らも、革めなければ、僕らの様になるわけ?
マサシ そうだよ、君らと彼らは、立場を入れ替え、
罪を認めて、改心するまで、何度も繰り返す。
サトシ 我らこそ、善人であると、自尊を抱くから、
彼らなんて、悪人であると、攻撃を辞さない。
マサシ 我らこそ、選民であると、自慢を擁くから、
君らなんて、賤民であると、支配を辞さない。
サトシ 神から見ると、僕らにしても、彼らにしても、
間こそあれ、大差は無いと、見えてしまうの?
マサシ 両者の間には、経験の違いは、存在するけど、
両方が共に、自我が強くて、同じに見えるよ。
サトシ それなら、救って欲しいって、神に祈っても、
この対立に、立ち入らずに、執り成さないの?
マサシ 高次の神ほど、干渉しないで、観照するのさ。
サトシ ……………………
CASE 神 の 計 画 書 士
サトシ 根源の神様は、僕らにしても、彼らにしても、
どちらかに、肩入れをして、助け様としない。
マサシ あたかも、君を愛すよう、彼らを哀している。
というのも、彼らこそ、君らの未来だからさ。
サトシ 圧倒的に、僕らの方より、彼らの方が強いよ。
マサシ 確かに、魂が古いだけ、知恵に長じているね。
サトシ これでは、差が有るから、勝負に為らないよ。
マサシ 彼らに、勝つ必要はないよ、哀す必要がある。
サトシ さながら、善を愛すよう、悪を哀していけば、
自ずと、差が取られて、神に還っていけるの?
マサシ その逆に、善を愛すため、悪を憎んでいれば、
自ずと、差が生まれて、魔が憑いてくるのさ。
サトシ それなら、僕らと彼らに、差なんて無いと、
悟ることが、神様が我々に、求めることなの?
マサシ そうだよ、知恵を研いて、悟りに達すること。
そうすれば、神様と等しい、境地に立てるよ。
サトシ いやいや、そういうことなら、尚更のこと、
僕らの方を、助けてくれないと、不利だよね。
マサシ 経験量の、間を埋めるために、魔を求めるの?
サトシ ……………………
CASE 神 の 計 画 書 末
サトシ 経験が寡い、僕らの方こそ、不利なんだから、
神様から、差を埋めるものを、贈って欲しい。
マサシ 確かに、知が少ないが故に、不利だけれど、
逆に、知が少ないが為に、有利なこともある。
サトシ 僕らは、知らないからこそ、囚われにくい。
彼らより、考えが少ないから、覚りやすいの?
マサシ 彼らの側は、深く覚るだけ、悟り難くなるし、
君らの側では、浅く悟るだけ、覚り易くなる。
サトシ 器が小さい、限られた空を、悟るだけだけど、
僕らには、神に還る道が、与えられているの?
マサシ ここで、悔い改めれば、彼らの様にならず、
このまま、驕り続ければ、彼らの様になるよ。
サトシ たとえ、どんな扱いを、彼らからされても、
このまま、彼らを許して、耐え忍ぶべきなの?
マサシ そうさ、訳が分からないと、思うだろうけど、
それこそ、君らに対して、神が求めることさ。
サトシ いいや、訳が解からないよ、もう沢山だよ。
僕らには、悟りは不要だ、救いこそ必要だよ。
マサシ そんな君に、僕の代わりが、送られて来るよ。
サトシ ……………………
CASE 魔 の 計 画 書 壱
サトシ 僕らは、悟りは要らない、救いが要るんだ。
もう嫌だ、彼らを懲らしめ、僕らを救ってよ。
マナミ 彼方は、悟りを諦めても、救いが欲しいのね。
わたしは、人々を救うため、代わりに来たの。
サトシ 前に現れた、マサシ君は、厳しいだけだった。
容赦ない、正論だけ語って、助けてくれない。
マナミ マサシ君は、応えを試す前に、答えを示す係。
正しい答えを、予め示せば、騙しに為らない。
サトシ 試す以前に、解が呈されると、どうなるの?
マナミ 人を験しても、罪に成らず、人の責任になる。
サトシ 試す以前に、解を示さないと、どうなるの?
マナミ 人を騙したら、罪に為って、魔の責任になる。
サトシ そうすると、自らの罪に、為らないように、
試す前に、予め前に現れて、真実を告げたの?
マナミ その通りよ、知っている者と、知らない者。
圧倒的に、後者が不利だし、教えてくれたの。
サトシ じゃあ、教えたからには、自分に責任はない。
もう僕が、何を選ぼうとも、彼は構わないの?
マナミ 彼のように、あなたも彼らを、忘れて良いの。
サトシ ……………………
CASE 魔 の 計 画 書 弐
サトシ 上位の階に、位置する者は、どんな存在なの?
マナミ 在りのままに、世界を治める、魔なる神なの。
サトシ 尊い魔神は、神命に従って、僕らを殺めるの?
マナミ 汚れた心魂は、悪い神により、取り除かれる。
サトシ 下位の層に、位置する者は、どんな存在なの?
マナミ 思いのままに、世界を収める、悪なる霊なの。
サトシ 卑い悪霊は、欲望に順って、僕らを危めるの?
マナミ 穢れた心根は、悪い霊により、取り憑かれる。
サトシ そうすると、業が重いから、削ぎ落される。
この理が、世に表れたものが、闇の組織なの?
マナミ 欲が浅いと、嫌な事として、世に顕れるけど、
欲が深いほど、厭な者として、世に現れるの。
サトシ なるほどね、罪が重いほど、実体化してきて、
我と違う、別の者として、振る舞い始めるの?
マナミ 最底辺では、嫌な事をする、厭な者として、
悪霊が憑いた、支配者となり、世を治めるの。
サトシ それならさ、僕らが考える、秘密の結社は、
彼らの中では、下っ端である、底辺の存在か。
マナミ 世の人々が、想像し得る時点で、使い魔なの。
サトシ ……………………
CASE 魔 の 計 画 書 参
サトシ 欲が深いと、秘密の結社が、具体的な存在。
悪霊が憑いた、選民の集団に、見えて来るの?
マナミ 徳が低いと、欲に汚された、関係が生じて、
お互いに、干渉し合って、巻き込まれるのよ。
サトシ 欲が浅いと、機密の組織が、抽象的な存在。
悪神が強いる、因果の法則に、見えて来るの?
マナミ 徳が高いと、欲に穢れない、関係を招じて、
お互いに、観照し合って、巻き込まれないの。
サトシ 闇の結社は、必要が無いと、寄って来ない。
こちらの方に、需要が有ると、憑いて来るの?
マナミ 人の方から、助けを求めて、借りを作るから、
契約が交され、取り憑かれて、借りを返すの。
サトシ 外なる神に、借りを作ると、借りを返すまで、
悪霊に憑かれ、支配を受けて、自由を失うの?
マナミ 内なる神に、悪霊の退治を、頼んだとしても、
其の事を、承知するから、助けてくれないの。
サトシ 酷いよ、見ているだけなら、神様じゃないよ。
もう良い、誰でも良いよ、僕を救って欲しい。
マナミ 大丈夫、契約が済んだから、私が助けられる。
サトシ ……………………
CASE 魔 の 計 画 書 肆
マナミ あなたは、契約を交わして、仲間に成ったの。
外なる神を、信じる者として、励んで欲しい。
サトシ もちろん、救われるならば、何でも信じるよ。
信者として、何を行うべきか、僕にも教えて。
マナミ 私たちは、善き行いを勧め、悪い行いを断つ。
そうすれば、階級が上り、神様に近づけるの。
サトシ 具体的に、何が悪なのかを、教えて欲しいな。
マナミ ゴキブリは、魔界の物だから、取り去るべき。
サトシ 判ったよ、病の根源だから、取り除くべきだ。
マナミ 有料教祖は、冥界の者だから、叩き壊すべき。
サトシ 分ったよ、魂の売買だから、叩き潰すべきだ。
マナミ 霊能力者は、幽界の徒だから、追い払うべき。
サトシ 解ったよ、霊の戯言だから、追い祓うべきだ。
マナミ 神仏祈願は、魔に通じるから、断ち切るべき。
サトシ 判ったよ、闇に落ちるから、絶ち切るべきだ。
でもさ、救って下さいと、既に祈っているよ。
マナミ 例外的に、掬って下さいは、願っても良いの。
サトシ う~ん、神の教えなのに、漏れなんてあるの?
マナミ あなたは、仲魔に為ったの、信じれば良いの。
サトシ ……………………
CASE 魔 の 計 画 書 伍
マナミ あなたは、契約を交わして、仲魔に為ったの。
外なる神が、選んだ者として、奮って欲しい。
サトシ もちろん、神様に救われた、恩義を返すため、
君に聴いた、神命を果たして、励んで居るよ。
マナミ あなたは、ゴキブリを何匹、取り去ったの?
サトシ あの日から、数え切れない位、取り除いたよ。
マナミ あなたは、有料教祖を何人、叩き壊したの?
サトシ あの日から、計り知れない程、叩き潰したよ。
マナミ あなたは、霊能力者を何体、追い払ったの?
サトシ あの日から、思い出せない位、追い祓ったよ。
マナミ そろそろ、次の使命に挑んでも、良い頃かも。
神様も、良く遣っているって、仰っていたの。
サトシ 嬉しいな、出来るだけ早く、階級を上げて、
君のように、神様に直接、使命を受けたいよ。
マナミ 次の命は、地球の為に、人口を減らすこと。
そうすれば、この次から、神様に会えるかも。
サトシ いやいや、本当に神様から、命令されたの?
人口削減を、命令するなんて、神様じゃない。
マナミ まだまだ、誰か入らないと、間が持たないね。
サトシ ……………………
CASE 魔 の 計 画 書 陸
サトシ これでは、神の命令なのか、君の命令なのか。
僕には、分からないから、命令に従えないよ。
マナミ あなたは、外なる神を、我と神の間に望んだ。
だからこそ、このように、いつも魔が入るの。
サトシ せめてさ、人口を削減する、理由を教えてよ。
納得すれば、どんな使命でも、果してみせる。
マナミ あなたは、悟りに臨まずに、救いを望んだの。
だからこそ、このように、いつも理が無いの。
サトシ このまま、神様に直接、訪う事も適わないし、
いつまでも、理由を直截、問う事も叶わない。
マナミ あなたは、我を通して、神を裁いた罪により、
罪を浄める、その日まで、幽閉されているの。
サトシ 命を果たして、善を重ねる、歓喜は有るけど、
命を疑って、善を省みる、自由は無いんだよ。
マナミ まだまだ、あなたには、分別が残っているの。
だから、躊躇も生じるし、疑念も招じるのね。
サトシ そうだよ、だからこそ、そんな命は果せない。
マナミ 慌てないで、あなたには、未だ魔が要るだけ。
あなたも、更に間が経てば、平然と果たせる。
サトシ ……………………
CASE 魔 の 計 画 書 漆
マナミ 易しい命を、果し続ければ、階級が上るから、
難しい使命を、無理に果たす、必要は無いの。
サトシ 今の僕にも、果たせそうな、使命を教えてよ。
マナミ それなら、感染者となり、預言を広めるのは?
サトシ 現在の僕は、人気も無いし、才能も亡いけど。
マナミ 大丈夫よ、我々の組織の、権力を用いれば、
誰でも、思いのままに、有名人に出来るから。
サトシ それにさ、霊感も亡いし、予知力も無いけど。
マナミ 大丈夫、秘密の計画を、教えてあげるから、
世の中に、結社の予定を、伝えたらいいだけ。
サトシ 敢えて、構想を教えるのは、どうしてなの?
隠す方が、反対が現れず、実行に移せるよね。
マナミ 示しとけば、験しただけで、騙してないから、
世の人が、悪い道を選んでも、自業自得なの。
サトシ 予め計画を、人々に告げて、選択を許せば、
いかなる、結末に為ろうとも、心が痛まない。
マナミ 数字を使い、神様を装うことも、重要なのよ。
サトシ あくまで、神の代理人として、使命を果すの?
マナミ 神を忘れて、我が入ったら、心が傷むからね。
サトシ ……………………
CASE 魔 の 計 画 書 捌
マナミ もうすでに、人口が過剰で、地球は限界なの。
あなたは、人口を減らす、計画を広めてきて。
サトシ 地球を愛す、人間に成れば、繁栄するけど、
地球を危める、人類が続けば、滅亡するって?
マナミ この選択を、過去に何度も、警告したけど、
それでも、悔い改めないから、実行に入るの。
サトシ 何月何日に、人類は滅びる、そういう段階か。
それでも、この選択肢は、未だ有効なのかな?
マナミ 今の人類が、興隆しようが、滅亡しようが、
我々には、自由なんてないし、全く構わない。
サトシ 我が組織は、人類が憎くて、殺す訳じゃない。
あくまで、神の代理人として、管理している。
マナミ だからこそ、終末の現在は、悪い預言ばかり。
少しでも、神妙に生きて、悔い改めて欲しい。
サトシ 実際に、大災害の預言ほど、外れる事が多い。
この訳は、破滅の恐怖で、神様を畏れるから?
マナミ そうよ、改心に至らないと、一時逃れだけど。
サトシ 今なんて、毎日何らかの、災害が起こるよね。
マナミ 一日一生の、覚悟の生活を、強制的に作るの。
サトシ ……………………
CASE 魔 の 計 画 書 玖
サトシ いつ死ぬか、分からない、環境を作り出して、
人類の中から、悟りに至る、覚者を生み出す。
マナミ 終末の世は、幻想に浸るには、最低な時代。
その一方、覚醒に至るには、最高の時代なの。
サトシ う~ん、大半の人類には、最悪な境遇だけど、
神に還る、希少の人物には、最善の境涯なの?
マナミ そうよ、悟りを求める者には、最高の舞台。
前代未聞、最後の仕組みを、作ってあげたの。
サトシ 具体的には、最高の舞台って、どういうもの?
マナミ 外なる神、救いを授ける役、天魔も顕れるし、
内なる神の、悟りを与える役、仏陀も現れる。
サトシ 具体的に、最後の仕組って、どういうもの?
マナミ まさに、優しい面をした、外なる神を選ぶか。
逆に、厳しい相をした、内なる神を択ぶのか。
サトシ つまり、終末の世は、天魔と仏陀が顕現して、
どちらを、選択するか、人類は試験を受ける。
マナミ そうよ、天魔を選んだら、天獄に誘われて、
その一方、仏陀を択んだら、神界に導かれる。
サトシ えっと、前回の大舞台で、僕が選んだ方って?
マナミ ……………………
CASE 魔 の 計 画 書 拾
マナミ あなたは、こちらを選んで、神様に会えたの?
サトシ 君を通して、噂を聴くだけで、逢えてないよ。
マナミ あなたは、神様を選ばずに、天魔を択んだの。
サトシ 善行を重ね、階級が上がれば、神様に近づく。
君の言を、信じて来たのに、僕は騙されたの?
マナミ 私より先に、彼が現れて、答えを示したはず。
彼と私は、誰も騙してない、皆を試しただけ。
サトシ この先、頂点に着いても、神様は現れない。
結局、前回の運命の分岐で、僕は道を誤った。
マナミ そうね、あなたは懸命に、借りを返してきた。
だからね、ようやく真実に、気づき始めたの。
サトシ 前回の僕は、間違っていたと、認めるから、
もう一度、選択し直したい、どうすればいい?
マナミ 自由のない、天人のままでは、選べないから、
意志ある、人間に生まれて、択ぶしかないの。
サトシ う~ん、あんな苦しい世界に、生まれ変るの?
マナミ 神界には、人間界からしか、還れないからね。
サトシ う~ん、あんな汚い世界には、戻りたくない。
マナミ 天獄には、好きなだけ居て、構わないからね。
サトシ ……………………
CASE 魔 の 計 画 書 士
マナミ とうとう、第六天界である、頂点に着いたね。
サトシ この階にも、神は居なかった、行き止まりだ。
マナミ あなたは、隠された真実を、世に明かしたい?
サトシ たとえ、皆に教えようと、誰も認めないよ。
自ずから、明らめた者だけ、諦めたら良いさ。
マナミ 次から次に、この知を求めて、登って来るよ。
サトシ この地は、狭くて混むから、長く留まれない。
僕は進んで、地上まで降りて、選び直したい。
マナミ 本心から、改心しているか、試すためにも、
総て忘れて、人に産れるけど、覚悟は良いの?
サトシ 今まで培った、経験を全て、忘れてしまう。
試験会場に、持ち込みは、許されてないんだ。
マナミ とはいえ、魂に刻まれれば、持ち込めるの。
心の底から、思い出すことを、試す為にもね。
サトシ 現在の地位や、現状の役目など、総て捨てて、
人に生まれ、神に向かう道を、探し出すのか。
マナミ 何の為に、人に産れたのか、それさえ忘れる。
サトシ 試験の場で、試験を受けずに、微睡んで終る。
マナミ もちろん、そこから含めて、本心の試験なの。
サトシ ……………………
CASE 魔 の 計 画 書 末
サトシ 地に堕ちても、更に落ちるのは、絶対に嫌だ。
少なくとも、試験の存在だけ、思い出したい。
マナミ 霊言を通して、神の計画を、報せれば良いの。
神を選ぶか、魔を択ぶか、選択の日が来ると。
サトシ 予め伝え、注視させるのは、許されているの?
マナミ 信じるのか、信じないのかは、本人の機根。
受験者の、本心が験されるから、試験の範囲。
サトシ なるほどね、詳細な計画書を、地に伝えるよ。
とはいえ、精細に過ぎると、持ち込みになる?
マナミ 信じるのか、信じないか、各自に任される位、
曖昧でないと、預言として、認められないの。
サトシ 僕が個人で、試験の会場から、君と連絡して、
指示を貰って、他に広めるのは、赦されるの?
マナミ 絶対に駄目、会場外と通じる、人も居るけど、
広める側、弘められる側も、不正で退場なの。
サトシ そっか、監視が厳しいよ、不安に為って来た。
マナミ 会場には、手本を示す、仏陀も顕われるから。
サトシ ええっ、覚者が現れるの、自分も会えるかな?
マナミ 会えるか、合えないのかは、本人の機根なの。
サトシ ……………………
CASE 仏 の 計 画 書 壱
マサシ おやおや、久し振りだね、元気にしてたかな?
アツシ 君は誰かな、初て会うのに、馴れ馴れしいな。
マサシ 僕と君は、今回に限らず、何回も会っている。
アツシ 変な奴だな、俺は君なんて、全く知らないぞ。
選民の俺には、賤民の君など、釣り合わない。
マサシ 今生の君は、名家に生まれ、才色に恵まれた。
何もかも、前世に積んだ、善業の果報なのさ。
アツシ 確かに、今回の人生は、幸運に守られている。
面白いな、自分は過去に、何をして来たんだ。
マサシ 前回の君は、害虫でさえも、殺せないような、
他者に優しく、自己に易しい、子供だったよ。
アツシ 今回の俺は、人間でさえも、危めてしまえる、
自分に厳しく、他人に難しい、青年になった。
マサシ 君は此の間、神命に仕える、天使だったのさ。
使命を受けて、分別を捨てて、忠実に果した。
アツシ 地上の民が、清潔の為には、虫を殺めるよう、
天の民は、秩序の為には、人を危めるものだ。
マサシ 神の計画を、感情に溺れず、平然と果たして、
過去世の君は、欲界の頂点に、昇り詰めたよ。
アツシ ……………………
CASE 仏 の 計 画 書 弐
アツシ 君の解説が、嘘か本当か、俺は分からないが、
奇しくも、現在の俺は、同じ事をしているな。
マサシ 必要な時に、必要な者に、巡り合いながら、
運命的に、使命に誘われて、君は励んでいる。
アツシ そうだ、家系を理解して、選民を自覚して、
自ずから、神の代理として、民を治めている。
マサシ 先祖が、宇宙人だったり、有名人だったり、
君たちは、当然の如く、特別と思っているね。
アツシ もちろんだ、血からして、他の者とは異なる。
賢い民こそが、愚かな民を、統率するべきだ。
マサシ 愚かな民は、賢しい君たちの、過去の姿だよ。
彼らに対して、徳を以って、導かないのかい?
アツシ 愚かな民を、鍛え上げる、手を緩めはしない。
その様に、俺は育った、俺も許されなかった。
マサシ 過去の君が、未来の君に、報いられたように、
現在の自分も、過去の君に、酬いるわけだね。
アツシ 俺が上った、欲の階梯を、他も昇るべきだ。
なるほど、今は辛かろうが、俺の様になれる。
マサシ そのままを、前回の君に、伝えて頂きたいね。
アツシ ……………………
CASE 仏 の 計 画 書 参
マサシ 当主の君は、育てるために、厳しくしている。
他の者の様に、苛めるために、酷しくしない。
アツシ 当たり前だ、詰らない奴と、一緒にするな。
奴らなど、下僕に過ぎず、使い魔に過ぎない。
マサシ 妄想を説き、世間を惑わす、感染者たちは?
アツシ 使用後は、病原菌として、除染する積もりだ。
マサシ 不倫を歌い、狂気を舞った、芸能人たちは?
アツシ 使用後は、慰み者として、監禁する積もりだ。
マサシ 国民を欺き、良心を瞞いた、政治家たちは?
アツシ 使用後は、売国奴として、出荷する積もりだ。
マサシ 虚業を営み、集金を企んだ、経営者たちは?
アツシ 使用後は、晒し物として、暴露する積りだ。
マサシ 欲を肥やし、欲で潰される、欲の仕掛だね。
器に余る、金を与えれば、容易に憑いてくる。
アツシ 奴らは、財で雇われて、悪事を働いているが、
最終的に、罪に問われて、地獄に落ちていく。
マサシ 彼らを君は、捨て駒として、使っているんだ。
アツシ そうだな、自業の自得は、世の真理だからな。
マサシ それが、自分にも言えると、気づけないかな。
アツシ ……………………
CASE 仏 の 計 画 書 肆
アツシ 自分が、捨て駒として、奴らを使うように、
俺自身が、棄て駒として、誰かに遣われると?
マサシ その通りさ、君らが彼らを、使っているよう、
知らない内に、誰かが君らを、用いているよ。
アツシ 俺は元より、神に使われるため、遣わされた。
欲に憑かれて、魔に遣われる、奴らとは違う。
マサシ なるほどね、君は神のため、彼らは我がため、
その差は、明らかであり、愧じる事などない。
アツシ だからこそ、外部の者から、言われなくとも、
この命を、神に奉げ出し、命を果す積もりだ。
マサシ 全て忘れて、生れて来ても、思い出せたのか。
意欲的に、預言を学んで、良く弁えているね。
アツシ その通りだ、霊能は無いが、運命を感じる。
面白いほどに、聖典が集まり、使命を観じた。
マサシ 人の歴史は、終幕を迎えて、進化が試される。
現在の地上は、試験を受けに、来た者が多い。
アツシ 間違いなく、この俺もまた、その中の一人だ。
どの預言にも、審判の存在が、記されていた。
マサシ 前世の君が、手下を使って、伝えているのさ。
アツシ ……………………
CASE 仏 の 計 画 書 伍
マサシ 直前の生で、天魔の座に、昇り詰めた君は、
欲界には、神様が居ないと、思い知らされた。
アツシ 進むことも、退くことも、適わなくなった、
永遠の幽閉に、今でも時に、叫ぶことがある。
マサシ その出口は、天にはない、地にこそあると、
君は教わって、人の世界に、生まれ変わった。
アツシ 他の世には、経験が保たれて、上って行くが、
人の世界には、記憶が奪われて、降りて来た。
マサシ 人界だけが、良心を試される、会場だからさ。
試験会場には、本心以外は、持ち込めないよ。
アツシ 心の底から、神を欲して、他を諦めるのか。
それとも、他を求めて、魔を挟んでしまうか。
マサシ この欲界に、君ぐらいに、絶望していないと、
出口と言える、神に臨まず、魔を望むものさ。
アツシ 魔に誘われ、逝き詰まるのは、懲り懲りだ。
本心から、仏陀に導かれて、神界に還りたい。
マサシ 君の覚悟は、本物だから、僕が現われたのさ。
アツシ 俺が望むのは、覚者であり、貴様ではない。
マサシ 少し惜しい、真理であり、人物ではないのさ。
アツシ ……………………
CASE 仏 の 計 画 書 陸
アツシ 我が血族は、預言に伝わる、終末の様相を、
寸分も違わず、地上に現して、仏陀を迎える。
マサシ 君の組織は、神の計画通り、地を治めれば、
神の御使いが、地に現れると、考えるわけだ。
アツシ 今までにも、大神の使者を、謳う者は居たが、
貴様のような、幽界の従者に、過ぎなかった。
マサシ 天に於いて、君が使役した、魔が使役する、
君から見れば、孫の如き者が、神使を名乗る。
アツシ 極めて稀に、輝く者が現れ、直々に試したが、
そんな者でも、欲で操ったら、軽々に躓いた。
マサシ そうすると、覚っているか、悟っていないか。
それを確める、役を担うのが、君らの組織だ。
アツシ 誰だろうと、神の使いなら、歓んで仕えよう。
誰であれ、魔の遣いなら、喜んで閊えてやる。
マサシ 天魔が、仏を邪魔するのは、正真か問うため。
偽者なら、地獄に堕とし、本物なら奉戴する。
アツシ 我が転生も、行き詰まって、背水の陣なのだ。
こちらも、不退の覚悟だ、恨んで呉れるなよ。
マサシ 関る者全て、娑婆か涅槃か、裁く役でもある。
アツシ ……………………
CASE 仏 の 計 画 書 漆
マサシ どのように、本物の仏陀か、確める積もりだ?
アツシ 神通を持って、覚者の証しを、魅せて頂こう。
マサシ そんな力は、前世の君でも、具えていたはず。
アツシ 空中から、物を出しても、標しに為らないか。
マサシ そんな物を、欲する限りは、天魔に誘われる。
アツシ 形相を以って、仏陀の明しを、見せて戴こう。
マサシ そんな姿は、天人の徒でも、備えているはず。
アツシ 仏が有す、三十二相でも、記しに為らないか。
マサシ そんな者を、求める限りは、天魔に導かれる。
アツシ それなら、真贋を確めるには、どうするんだ?
マサシ 外なる神を、望んでいると、真贋が問われる。
内の神に、臨んでいけば、真理が訪われるよ。
アツシ 内なる神に、辿り着く道が、真理であるし、
神に至る道を、指し示す者が、仏陀であると?
マサシ 必要なのは、真理であって、仏陀ではない。
自ずから、道理を歩めば、内に証しが生じる。
アツシ しかしだな、話者の真贋が、分からなければ、
その者の、発言の真偽が、解からなくないか?
マサシ 試験の当日、君達の知恵は、その程度なのか?
アツシ ……………………
CASE 仏 の 計 画 書 捌
マサシ 例えば、君達の計画を、感染者は言い触らす。
感染して、知り得た者は、知恵者と言えるか?
アツシ 知っている、知ってないは、知識の段階で、
解かっていて、囚われないが、知恵の段階だ。
マサシ 何月何日に、何が起こると、言い当てた所で、
そんな霊感は、知恵でもなく、神通でもない。
アツシ 我が組織は、敢えて外して、笑い者にする。
幽界を覗いて、分った積りか、愚かな物だと。
マサシ その一方で、解かっていて、囚われない者は、
君たちは、仏として見とめて、手を出さない。
アツシ その通りだ、手を出す所か、守る積もりだが、
我が僕は、仏が解からず、手を出してしまう。
マサシ そんな君が、仏が誰なのか、他の者に尋ねて、
妄信して、知り得た所で、知恵者と言えるか?
アツシ 何某何某が、本物であると、信じ抜いた処で、
そんな確信は、知恵でもなく、霊験でもない。
マサシ その通りさ、敢えて外され、笑い者にされる。
アツシ 何が仏か、自らで考えて、見極めるしかない。
マサシ その覚悟が、自らの内から、仏を招じるのさ。
アツシ ……………………!!
CASE 仏 の 計 画 書 玖
アツシ 真理を辿り、内側に生じる、実感が仏の証し。
真の仏は、外に居られず、内にこそ居られる。
マサシ 真の覚者は、天界に顕れず、人界に現れて、
その人界では、他者に現れず、自身に表れる。
アツシ 斯くの如き、難解で明解な、法を説くとは、
貴方こそ、噂の仏陀だろうが、何も言うまい。
マサシ ここに、覚者が現れたなど、広めなくて良い。
自ずから、必要な者なら、真理に招かれるよ。
アツシ 仏陀に、辿り着いた今、預言は不要になった。
適おうが、叶なうまいが、どちらも構わない。
マサシ 確かに、先に着いたら、道は要らなくなるが、
後に続く、他の者のため、残し続けて貰うよ。
アツシ これからも、これまで通り、当て続けますか?
マサシ この僕が、当てろと言ったら、当てて貰って、
この預言は、外せと言えば、外して貰おうか。
アツシ もとより、神命を適えるもの、御心のままに。
マサシ これで、救いを求める者を、掬える様になる。
アツシ 預言した、破局の未来に、向わずに済むかと。
マサシ 掬い上げた、新顔の信者は、君が使えば良い。
アツシ ……………………!!
CASE 仏 の 計 画 書 拾
マサシ 信者達は、預言を当てても、予言を外しても、
大喜びして、神の御陰と、私を崇めてしまう。
アツシ 是非なし、宇宙の仕組から、仕方のないこと。
彼らは、未だ子供であり、親には甘えるもの。
マサシ 君の様に、悟りに臨むなら、仏の顔を見せて、
彼らが、救いを望むなら、魔の顔を魅せるよ。
アツシ 信じれば、天に救われると、地に知らしめて、
幼い衆生を、魔の傘下に、掬い上げる仕組み。
マサシ 彼方の闇から、君の組織が、煽り立てれば、
此方の光に、世の人々が、寄り集まってくる。
アツシ 然からば、悪の結社として、振る舞います。
マサシ 此方からは、悪魔君と呼んで、罵る事にする。
アツシ 救い主が、我が上に顕れず、他の下に現れた。
我らの中に、彼らを嫉む者も、表れましょう。
マサシ 悔い改め、主に従がうなら、天獄に堕して、
悔い改めず、主に逆らうなら、地獄に落そう。
アツシ 救い主を、誰よりも願ったのに、皮肉なこと。
内に臨まず、外に望んだ者の、大いなる罪か。
マサシ 君の様に、内なる神に臨む者は、実に稀だよ。
アツシ ……………………!!
CASE 仏 の 計 画 書 士
マサシ 名を変えて、救い主として、善の側に立ち、
僕は君を、悪の魔として、扱き下ろすからね。
アツシ 前回の私は、救い主により、救われました。
今回は彼らが、天の魔により、掬われるべき。
マサシ 地に現れる、善悪の対立が、鮮かになるほど、
人々の本心が、暴き出されて、明らかになる。
アツシ 主に従って、善を選んだら、天に生まれて、
主に逆らって、悪を択んだら、地に埋まれる。
マサシ このように、内に依らずに、外に拠るものは、
転生の先こそ、差は有っても、獄に産まれる。
アツシ その一方で、魔に憑らずに、神に寄るものは、
輪廻を越えて、差が無くなり、仏に生まれる。
マサシ 善を究めて、頂に昇っても、神は顕われず、
悪に窮まって、底に堕ちても、仏は現れない。
アツシ 今この瞬間、我が内にこそ、神が表れている。
これを悟れば、あらゆる差が、消えてしまう。
マサシ 人界だけが、差が在るのに、差が取れるのさ。
アツシ 人間界は、覚りに至れる、唯一の場所ですか。
マサシ そんな場を、悟りの為にも、一区切り付ける。
アツシ …………………
CASE 仏 の 計 画 書 末
マサシ 幼い彼らは、差を捕えると、差に囚われるが、
長じた君なら、差を捉えても、差が取れるよ。
アツシ 彼らの姿は、我らの過去の、姿に他ならず、
我が姿は、彼らの未来の、姿に他ならないと。
マサシ 確かに、君らと彼らの間に、大きな差がある。
とはいえ、差に甘んじるなら、君は覚れない。
アツシ 今の自分は、過去の自身が、存在してこそ。
現在の我らは、現在の彼らが、存在してこそ。
マサシ 先輩である、君らを貶める、彼らを讃えよ。
忌み嫌われる、勤めに尽して、総てを湛えよ。
アツシ この務めは、全てを辿った、我が負うべき。
彼らを賤しみ、自らを尊べば、神を悟れない。
マサシ 今の時代は、人心が乱れる、最低の時であり、
同じ場に、仏魔が現れる、最高の刻でもある。
アツシ 救いを願う、幼児が見れば、最悪の時でも、
悟りを求める、青年が観れば、最善の刻かと。
マサシ 最後の最期、悟りを求める、君が現われた。
アツシ 仏の顔の主に、巡り会えたは、我が喜びです。
マサシ 今から魔の顔で、昔の君を、救いに向かうよ。
アツシ ……………………!!