第六章 第六一話 対話編
CASE 正統 の裏に 異端
マナミ 多数が説く、正統って、どういうものなの?
マサシ 正統とは、多が見とめる、広い道のことだよ。
マナミ 他が勧める、道を選んだら、どうなるのかな?
マサシ 属するだけで、進んでいると、見てしまうよ。
マナミ 進めるほど、他が推すから、慢が生まれるの?
マサシ そうだよ、慢心を抱いて、異端を排するのさ。
マナミ 少数が解く、異端って、どういうものなの?
マサシ 異端とは、多が認めない、狭い道のことだよ。
マナミ 他に逆らう、道を択んだら、どうなるのかな?
マサシ 属すだけでは、進んでないと、見とめるのさ。
マナミ 進めるほど、他に障るから、慢が生じないの?
マサシ そうだよ、虚心を抱いて、正統を拝するのさ。
マナミ 広い道ほど、慢を抱くから、堕ち易くなるし、
険しい道ほど、慢を砕くから、落ち難くなる?
マサシ 自分が正しいと、思えることは、諸刃の剣さ。
想えないと進めず、思い過ぎれば、堕落する。
マナミ う~ん、でも、何かしら、信じている人は、
正しいと、思っているのが、普通じゃないの?
マサシ そうさ、堕天しない者は、非常に珍しいのさ。
マナミ ……………………!!
CASE 正統 の先に 異端
サトミ 正統と異端、どちらの方が、難しいのかな?
メグミ 正統より、異端を進める方が、遥に難しいよ。
サトミ 多が認める、正統って、どういうものかな?
メグミ 正統とは、最初に修める、易しい教えなのよ。
サトミ 多に逆らう、異端って、どういうものかな?
メグミ 異端とは、最後に修める、難しい教えなのよ。
サトミ 正統を終え、異端に進むと、どうなるのかな?
メグミ 先に進むほど、正統の人から、罵られるのよ。
サトミ 落ちて行ったと、後進の人から、蔑まれるの?
メグミ 訳が解らない、正統の人々は、異端を侮るよ。
サトミ ここで、異端が、誤解を解くと、どうなるの?
メグミ 多が認め、正統に戻るから、最初に巻き戻る。
サトミ ここで、異端が、誤解を許すと、どうなるの?
メグミ 多に背き、異端が続くから、最後に辿り着く。
サトミ 決して、他に依る事なく、自らに拠り続けて、
狭き道を、独り突き進むと、何に辿り着くの?
メグミ 総ての道は、真理に通じると、思い知るのよ。
サトミ 全てを修めた、破格の存在しか、悟れないね。
メグミ うん、異端を異端と思わない、真の正統派よ。
サトミ ……………………!!
CASE 万 教 同 根
サトシ あのね、万教同根って、どういうものかな?
マサシ どんな教えも、その根に、真理を持つことさ。
サトシ う~ん、そもそも、真理って、どういうもの?
マサシ 真理とは、Aも非Aも、どちらも正しいだよ。
サトシ Aが正しく、非Aが誤り、こういう教えは、
前半の部分が、真理だって、そういうことか。
マサシ Aが誤り、非Aが正しい、こういう教えは、
後半の部分が、真理だって、そういうことさ。
サトシ なるほどね、真理から見れば、どんな教えも、
真理の一部を、説いている、ということだね。
マサシ そうさ、だから、真理を悟った人から見れば、
いかなる教えとも、対立する必要が無いのさ。
サトシ う~ん、反対に、悟っていない人から見れば、
真理って、誰とも、対立することになるよね。
マサシ そうさ、誰にも、侵したくない禁忌がある。
でも、悟りたいなら、禁断に触れるしかない。
サトシ う~ん、自らの正統を、信じている人ほど、
自ら、異端を認められず、異端に落ちていく。
マサシ そうさ、万教同根を悟るの、とても難しいよ。
サトシ ……………………!!
CASE 異端なき正統 と 正統なき異端
サトミ 正統と異端、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ Aだけ選ぶ、正統って、どういうものかな?
メグミ 正統とは、選び易い道を、進んで行くことよ。
サトミ 非Aを択ぶ、異端って、どういうものかな?
メグミ 異教とは、択び難い道を、進んで行くことよ。
サトミ 正統を望み、異端に臨まないと、どうなるの?
メグミ 異端なき正統なんて、何も選べていないのよ。
サトミ じゃ、非Aを択ばずに、Aだけ選んだけど。
メグミ 結局は、非が無いならば、Aも無くなるのよ。
サトミ 異端を望み、正統に臨まないと、どうなるの?
メグミ 正統なき異端なんて、何も択べていないのよ。
サトミ じゃ、Aを選ばないで、非Aを択んだけど。
メグミ 結局は、Aが無いならば、非も無くなるのよ。
サトミ 正統だけでは、後に達する、道が見えないし、
異端ばかりでは、前に辿った、道が見えない?
メグミ うん、正統と異端、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、正統を介して、異端を解していくの?
メグミ うん、正統を究めて、異端を極めていくのよ。
サトミ ……………………!!
CASE 豪 華 客 船 壱
マサシ 君は、豪華客船の映画を、観たことあるかい?
サトシ あるよ、実際の事故を、題材にした映画だね。
マサシ あれはね、欲望の世界を、建て直すために、
直に起こる、欲界の破壊を、映し画いたのさ。
サトシ そのうち、客船のように、世界を沈没するの?
マサシ そうさ、改革するため、完全に破壊するのさ。
サトシ いやいや、そんなことは、聞いていないって。
そんな、重要なことは、予め教えて欲しいよ。
マサシ 神様から、重大なことは、前に教えて貰える。
現実に、様々な示唆が、既に降りて来ている。
サトシ それって、霊言や奇跡で、魅せるものかな?
マサシ ううん、奇異で誘うものは、天人の干渉だよ。
サトシ 天人から、教唆する時は、どうするのかな?
マサシ 軌跡を外れ、奇跡を魅せて、人々を誘うのさ。
サトシ 正神から、示唆する時は、どうするのかな?
マサシ 軌跡に即し、現実を見せて、人々を導くのさ。
サトシ あくまで、現実の世界に、象徴を含めるのか。
例えば、言葉遊びとか、数字遊びの様なもの?
マサシ その程度の、子供騙しは、天魔からの干渉さ。
サトシ ……………………
CASE 豪 華 客 船 弐
マサシ この人界は、奇跡と言える、貴重な世界だよ。
サトシ 現実の人々が、映画の世界を、見るように、
多様なる存在が、人間の世界を、見ているの?
マサシ 現実の僕らが、映画の物語を、鑑賞するよう、
多くの者が、人間の物語を、観照しているよ。
サトシ 菩薩など、正なる神々は、どう見ているの?
マサシ 正なる神は、観照だけして、干渉しないのさ。
サトシ 異星人や、天なる人々は、どう見ているの?
マサシ 天なる人は、感傷ばかりか、干渉までするよ。
サトシ あたかも、映画の台本に、干渉できないよう、
外から、映画の物語を、誘導してはいけない?
マサシ そうだよ、映画の世界を、誘導したければ、
映画の、登場人物に生まれ、実演することさ。
サトシ 天の人は、奇跡を魅せて、外から誘うけど、
正なる神は、軌跡を見せて、内から導くのか。
マサシ そうだよ、軌跡を踏まえずに、干渉する者は、
自らも、神の掟を知らない、天の人々なのさ。
サトシ 善意でも、神様の計画を、邪魔しているのか。
マサシ これは、天人の善行か、いや、天魔の所行か。
サトシ ……………………
CASE 豪 華 客 船 参
マサシ この人界は、正神に創られた、映画と言える。
サトシ 映画の役者は、どのように、評価されるの?
マサシ 天の人々は、演じる役で、判断しているけど、
正なる神々は、演じる熱で、判定しているよ。
サトシ 天なる人は、どのように、役で判じるのかな?
マサシ 善役は好いが、悪役は悪い、そう断じるのさ。
サトシ 集中せずに、演じようと、善人なら好いの?
マサシ 熱中して、演じていようと、悪者なら悪いよ。
サトシ 天人に、良いと認められると、どうなるの?
マサシ この次は、善を演じる役に、回してくれるよ。
サトシ 正なる神は、どのように、役で判じるのかな?
マサシ 真摯は好いが、軽薄は悪い、そう定めるのさ。
サトシ 悪しき役を、演じようと、真剣なら好いの?
マサシ 善い役を、演じていようと、散漫なら悪いよ。
サトシ 正神に、良いと認められると、どうなるの?
マサシ この次は、映画を写す側に、廻してくれるよ。
サトシ つまり、映画に参加せず、外から断じるだけ。
そういう、浮付いた天人は、どう定められる?
マサシ たとえ、善意だとしても、邪魔な存在だよね。
サトシ ……………………
CASE 豪 華 客 船 肆
サトシ 映画を創る、正神って、どういうものかな?
マサシ 正神とは、舞台を創って、写しているものさ。
サトシ 映画に入る、人間って、どういうものかな?
マサシ 人間とは、舞台に上がり、演じているものさ。
サトシ 映画を見る、天人って、どういうものかな?
マサシ 天人とは、舞台を離れて、眺めているものさ。
サトシ つまり、人間の世界は、正神による映画なの?
マサシ そうだよ、それを知らず、観客が騒いでいる。
サトシ 観客が、善意で干渉すると、どうなるのかな?
マサシ 友として、舞台に上げて、天人を演じさせる。
サトシ 観客が、悪意で干渉すると、どうなるのかな?
マサシ 敵として、舞台に上げて、天魔を演じさせる。
サトシ つまり、欲望の世界も、正神による映画なの?
マサシ そうだよ、それを知らず、欲界が騒いでいる。
サトシ 人の世界は、天人が眺める、映画の型であり、
欲界の世界は、全員が演じる、映画の形なの?
マサシ 邪魔な観客さえ、舞台に上げる、正神の器さ。
サトシ 舞台の裏では、色界の神々が、画を映すのか。
マサシ その全てを、独存の真我が、観照しているよ。
サトシ ……………………!!
CASE 豪 華 客 船 伍
サトシ 型である、人間の世界は、どんな世界なの?
マサシ 人の舞台は、似てない者が、集って来るのさ。
サトシ 出身地が、分れていると、どうなるのかな?
マサシ 多くの役が、生まれるから、劇が豊かになる。
サトシ 形である、欲望の世界は、どんな世界なの?
マサシ 他の舞台は、似ている者が、集って居るのさ。
サトシ 出身地が、別れてないと、どうなるのかな?
マサシ 多くの役が、産れないから、劇が乏しくなる。
サトシ 人の生は、経験が多くて、変化が有るけど、
他の舞台は、経験が少なく、変化が無いんだ。
マサシ そうだよ、人間の生とは、稀有な機会であり、
他の生では、同じ繰り返し、成長が出来ない。
サトシ 人の生で、評価されたら、上の世界に行き、
反対に、評価されないなら、下の世界に逝く。
マサシ そうだよ、劇内の評価と、作品外の評価は、
異なるけど、どちらも、そう言うことになる。
サトシ なるほど、僕だって、成長の機会が欲しいな。
毎日が、同じ繰り返し、刺激が無いんだもん。
マサシ 人の生で、それを言うと、評価が悪くなるよ。
サトシ ……………………
CASE 豪 華 客 船 陸
サトシ 僕も、人界を舞台にした、映画に出演したい。
マサシ じゃあ、裏方の正神と、契約を交せばいいよ。
サトシ 出演時の、正神の契約は、どういうものなの?
マサシ 作品に、集中するため、素性を忘れることさ。
サトシ 前作、何を演じたのかは、完全に失われるの?
マサシ 今作に、集中するほど、評価が高くなるのさ。
サトシ でも、前作の役名を、教える存在が居るよね。
マサシ そうさ、出演の履歴を、観客は知っているよ。
善意から、履歴を教える、支持者も存在する。
サトシ 観客を忘れ、契約に拠ると、どうなるのかな?
マサシ 天人と契らず、正神が宿れる、名優に成るよ。
サトシ 契約を破り、観客に依ると、どうなるのかな?
マサシ 正神と約さず、天人に媚びる、迷幽に為るよ。
サトシ 本来ならば、作品毎に神と、契約と交すけど、
観客の評判を、気にするほど、天人と交すの?
マサシ 本来ならば、一生毎に神の、世界に還るけど、
善悪の評定を、気にするほど、輪廻を巡るよ。
サトシ 戻ろうにも、戻れなくなり、迷っていくのか。
マサシ こうして、既に出ている事も、忘れてしまう。
サトシ ……………………
CASE 豪 華 客 船 漆
サトシ 監督を忘れ、観客と契ると、どうなるのかな?
マサシ 天の人は、外に顕われて、善い方を勧めるよ。
サトシ 外の観客は、舞台の外から、俳優に関わるの?
マサシ 贔屓の縁者が、善役を演じる、道に誘うのさ。
サトシ 観客の目は、一部の役者を、追っているの?
マサシ そうだよ、一員が主役であり、他は脇役だよ。
サトシ じゃあ、誰かを観照しても、他に干渉しない。
マサシ 天の人が、感傷するのは、贔屓の役だけだよ。
サトシ 観客を忘れ、監督と約すと、どうなるのかな?
マサシ 正の神は、内に現われて、良い法に進めるよ。
サトシ 奥の監督は、舞台の中から、俳優に係わるの?
マサシ 平等に演者が、真剣に演じる、道に導くのさ。
サトシ 監督の眼は、全部の役者を、負っているの?
マサシ そうだよ、全員が主役であり、傍役などない。
サトシ じゃあ、誰にも干渉せずに、総てを観照する。
マサシ 内の神は、舞台の奥から、静かに見守るのさ。
サトシ すると、僕が映画を見ると、主役に目がいき、
なかなか、その他の役に、共感できないのは。
マサシ 君自身、誰と契っているか、実に明らかだね。
サトシ ……………………