物語編
第一章 第八話 物語編
第一章 相 と 層
第八話 左右に並べる と 上下に重ねる
〈初めて見る顔だ、貴様は誰だ、奴らの一味か。
何よりも、敵なのか、味方なのか、はっきりしろ。
ここで、嘘など言えば、どうなるか、解っているな。〉
私の浮ついた閃きは、瞬く間に消し飛んでいた。
この猛る男に向かって、口先では嫌っていようが、
本心では好きだろうとは、私からは決して言えない。
敵でもあり、味方でもあると、言おうものなら、
半分まで、味方であるのに、殺されそうな勢いだ。
そうなれば、答えられる道は、自ずと決まって来る。
私は、老師の正体を確めたいと、答えたのだが、
途端に、彼は険しい顔になり、適切な解を迫った。
彼の中で、其の正しい解は、既に決っているようだ。
彼は、私に対して、同じ台に乗ることを逼って、
加えて、私に向かい、同じ側に立つように迫った。
私は、嘘で応えるしか、この場を逃れられなかった。
真実を望んで来たのに、虚偽に臨まされている。
この神の悪ふざけに、私は良心の呵責を覚えたが、
背に腹は代えられない、私は真理の為に嘘を吐いた。