物語編
第一章 第十話 物語編
第一章 量 と 質
第十話 横から捉える と 上から捕える
敵ではないと、解かるや否や、態度が変わった。
男は、同じ側に立っている限り、悪い人ではない。
むしろ、こんなことが無かったら、善人に違いない。
悲しいかな、友を愛すという、優しい性こそが、
仲間を危める、敵を憎むという、厳しい性となる。
皮肉な物だ、絶対的に悪い輩など、何処にも居ない。
意識してか、意識しないでかは、解からないが、
世の人の、意識に眠っている、潜在的な可能性を、
老師は、騒動を捲き起こし、掘り起こしているのか。
ただ漫然としながら、日々を繰り返していては、
いつ認められるか、分からない、人々の心の闇を、
白日の下に晒し出して、課題を突き付けているのか。
ほっておけば、数十年は、掛かりそうな問いを、
世の人が逃げ出せないよう、世の中に突き付けて、
その中の、少しでも悟れば良いと、考えているのか。
同じことを繰り返すと、別の視点が現れ始める。
その回数が、人より少しだけ、私は少ないようだ。
有ること無いこと、様々な考えが、浮んでは消える。