物語編
第一章 第十三話 物語編
第一章 因果 と 条件
第十三話 実感を与える と 実感を変える
危ういぞ、私は首を横に振って、目を覚ました。
またしても、神懸りの妄想に、嵌るところだった。
もう、完全に、老師の掌の上で、振り回されている。
すると、この様子を見ていた、先の男が言って来た。
〈君は、未だ若いから、独りで行くのは危ない。
もうじき、政府の軍隊が、一斉に突入するそうだ。
少し待って、関係者たちと、一緒に行ったらどうだ。〉
彼の言葉が、私を現実まで、引き戻してくれた。
考えるから取り憑かれる、考えずに動かなければ。
幸い私は、振り返るような、過去は持ち合せてない。
「ここまで、配慮を頂いて、有り難いことです。
確かに、私は、知らない間に、憑かれていました。
とはいえ、友が待っている限り、独りでも行かねば。」
兵士の突入を待っていれば、老師は捕まえられ、
私が、法を尋ねる、最後の機会が失われるだろう。
それゆえ、彼らが来る前に、進まなければならない。
友とは、朋友ではなく、法友のことであったが、
優しい人に、優しい嘘を吐いて、進むことにした。
この方に、私は軽く会釈して、目の前の扉を開けた。