第一章 第十六話 対話編
CASE 異質 の裏に 同質
マナミ 異なること、異質って、どういうものなの?
マサシ 異質とは、Aと非A、「非」の部分のことさ。
マナミ 等しいこと、同質って、どういうものなの?
マサシ 同質とは、Aと非A、『A』の部分のことさ。
マナミ つまり、一元から、Aと非Aに分かれるとき、
必ず、異質と同質が、同時に生まれているの?
マサシ そうさ、異質が埋まれない、同質も無いし、
逆に、同質が埋まれていない、異質も無いよ。
マナミ う~ん、良く解からないの、本当にそうなの?
マサシ それなら、三角と四角の違いは、分かるかい?
マナミ うん、「数」が異なるから、良く解かるの。
マサシ それは、『角』が等しいから、良く判るのさ。
じゃ、楕円形と放物線の違いは、分かるかい?
マナミ ううん、何が異なっているか、全く解らない。
マサシ どちらも、『二次曲線』さ、これなら分かる?
マナミ そっか、「離心率」が異なり、良く解かるの。
マサシ ほら、同質を認めるとき、異質を認めるのさ。
マナミ う~ん、それと、これとは、異なる気がする。
マサシ もう、それは、ほとんど、認めているんだよ。
マナミ ……………………
CASE 異質 の先に 同質
メグミ 差異が生まれるとき、類似が埋まれているの。
相違点が現われるとき、共通点が隠れている。
サトミ なんだか、良く解からないの、どういうこと?
メグミ じゃあ、犬と猫の違いって、良く分かるかな?
サトミ もちろん、動物の違いとして、良く解かるよ。
メグミ じゃあ、犬と木の違いって、良く分かるかな?
サトミ もちろん、生物の違いとして、良く解かるよ。
メグミ じゃあ、犬と石の違いって、良く分かるかな?
サトミ これだと、比べられずに、良く解からないの。
メグミ そうでしょ、相違する点が、良く分かるには、
比較の条件に、共通する点が、必要になるの。
サトミ 意識的に、相違する点を、望もうとすると、
無意識的に、共通する点に、臨もうとするの?
メグミ そうさ、犬と猫なら、条件を探し易いけど、
それこそ、犬と石なら、条件を探し難いのさ。
サトミ つまり、これって、同じ土俵に立たないと、
勝負が付かない、これと、同じことじゃない?
メグミ うふっ、そうそう、それと、同じことだよ。
過去との共通点から、現在の相違点が解るの。
サトミ ……………………!!
CASE 異質 という 同質
サトミ もう、あんたは、いつでも、屁理屈なのよ。
サトシ 何だよ、君だって、いつでも、感情論なんだ。
メグミ あら、お二人は、いつでも、仲良しですね。
サトミ やだな、仲が良いなんて、有る訳がないわ。
サトシ そうだよ、仲が良いなんて、在る筈がないよ。
メグミ うふっ、違って映るのは、合って居るから。
擦れ違いは、似ている点が、有るからですよ。
サトミ う~ん、屁理屈と感情論、どこが等しいの?
メグミ どちらも、因果に囚われる処は、同じなのよ。
サトシ 理屈が、因果に捕われるのは、どんな所かな?
メグミ 因果こそ、普遍であるって、思い込む処だよ。
サトミ 感情が、因果に捕われるのは、どんな所なの?
メグミ 因果こそ、当然であるって、想い込む処だよ。
サトシ じゃあ、屁理屈と感情論、どこが異なるの?
メグミ 実感には、前者は囚われず、後者は捕われる。
サトミ そっか、因果に囚われるのは、同じだけど、
実感に捕われるか、否かが、違うってことね。
サトシ なるほど、屁理屈と感情論は、そっくりだね。
サトミ なによ、どこがそっくりよ、似てる訳ないわ!
メグミ ……………………
CASE 同質なき異質 と 異質なき同質
サトミ 異質と同質、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 質を観じる、異質って、どういうものかな?
メグミ 異質とは、Aと非Aでは、非が異なることよ。
サトミ 質を感じる、同質って、どういうものかな?
メグミ 同質とは、Aと非Aでは、Aが等しいことよ。
サトミ 異質を望み、同質に臨まないと、どうなるの?
メグミ 同質なき異質なんて、唯の同質に過ぎないよ。
サトミ じゃ、Aを感じないと、非を観じられないの?
メグミ そうよ、非を観じないと、何も変わらないよ。
サトミ 同質を望み、異質に臨まないと、どうなるの?
メグミ 異質なき同質なんて、只の異質に過ぎないよ。
サトミ じゃ、非を観じないと、Aを感じられないの?
メグミ そうよ、Aを感じないと、何も関わらないよ。
サトミ 異質だけでは、変らなくて、同様に観じて、
同質ばかりでは、関らなくて、異様に感じる。
メグミ うん、異質と同質、その両方が、必要なのよ。
サトミ そっか、同質を介して、異質を解していくの?
メグミ うん、同質を感じて、異質を観じていくのよ。
サトミ ……………………!!