物語編
第一章 第十七話 物語編
第一章 自我 と 他我
第十七話 同じ者と同じ と 違う者と同じ
『中に入りたいと嘆く、不埒な若者とは君のことか。』
私を敵と見做した者が、呼びに行ったのだろう。
眼の前に、威厳を隠し切れない、指揮官が現れた。
私が、彼にするように、彼もまた、私を品定めした。
『誰であれ、ここに集まりし者達は、心が弱い。
認めないだろうが、心の弱さ故に、誘われている。
若者も然り、親も然り、賢者も然り、我々も然りだ。』
『若者は、人生の苦しみから、逃げようとして。
その親達は、不運な悲しみから、遁れようとして。
お雇い賢者は、挫折の蔑すみから、抜けようとして。』
『実に、面白い、君は、いずれでもないようだ。
他の者の様に、心の弱さ故に、尋ねた訳でもなく、
だからといって、心の強さ故に、訪れた訳でもない。』
『君の心は、弱くも強くもない、君の心は無だ。
何か守りたい物があるから、心が弱い訳でもなく、
誰も護りたい者がいないから、心が強い訳でもない。』
『もし、前者なら、この主の信者になるだろう。
もし、後者なら、この教団の狂信者となるだろう。
つまり、どちらでもない君は、どちらでも構わない。』