第一章 第十七話 対話編
CASE 自 の裏に 他
マナミ 自分らしさ、自我って、どういうものなの?
マサシ 自我とは、自分らしさに、囚われる意識だよ。
マナミ 他者らしさ、他我って、どういうものなの?
マサシ 他我とは、他者らしさに、捕われる意識だよ。
マナミ う~ん、他者らしさに、捕われているのは、
自分なの、他人なの、この場合、どっちなの?
マサシ なるほどね、そういう、君は、どっちと思う?
マナミ もちろん、捕われるのは、他人の方であり、
他人が、自我を作り上げる、だけだと思うの。
マサシ もちろん、そう考えても、誤りじゃないけど、
自分も、自分らしくないに、囚らわれるのさ。
マナミ じゃ、自分らしくない、他我を作り上げて、
同時に、自分らしい、自我を造り上げている?
マサシ うん、自我を造るため、他我を作っている。
つまり、他我を介し、自我を解しているのさ。
マナミ じゃ、他我に見えるものは、自我ってこと?
う~ん、あなたに言われても、そう思えない。
マサシ もちろん、そう考えたって、誤りじゃないよ。
でもね、僕に言わせているの、君自身なのさ。
マナミ ……………………
CASE 自 の先に 他
サトミ 自ら重なる、自我って、どういうものかな?
メグミ 自我とは、自分らしさが、積み重なることよ。
サトミ どのように、自分らしさを、積み重ねるの?
メグミ 自分らしいと、他者らしいを、選り分けて、
前者だけを、受け容れると、我に重なるのよ。
サトミ 自分らしさを、磨き上げると、どうなるの?
メグミ 自我が強くなり、我が山の頂が、高くなるよ。
サトミ 他に重なる、他我って、どういうものかな?
メグミ 他我とは、他者らしさが、積み重なることよ。
サトミ どのように、他者らしさを、積み重ねるの?
メグミ 自分らしいと、他者らしいを、選り分けて、
後者だけを、切り捨てると、他に重なるのよ。
サトミ 他者らしさを、投げ棄てると、どうなるの?
メグミ 他我が多くなり、我が山の麓が、広くなるよ。
サトミ 意識的に、自分らしいを、受け容れるほど、
無意識には、他者らしいを、投げ捨ててるの?
メグミ そうよ、だから、この世界が、歪に見えるよ。
サトミ さぞ、自我の山が、聳え立って、そうだね。
メグミ うふっ、あなたから、見ていると、そうかも。
サトミ ……………………
CASE 自 という 他
サトシ 意識から生じる、我って、どういうものなの?
マサシ 意識とは、同質を積み重ねた、和のことだよ。
その意識に、囚われると、和は我になるのさ。
サトシ 自分であるに、捕われると、どうなるのかな?
マサシ 自意識に、自分であるを、受け容れるとき、
無意識には、自分でないを、切り捨てるのさ。
サトシ じゃあ、自我が自意識、非我が無意識に移る?
マサシ うん、自我が生まれると、非我が埋まれるよ。
サトシ 自分でないに、捕われると、どうなるのかな?
マサシ 無意識に、自分でないを、投げ棄てるとき、
自意識には、他者であるを、作り上げるのさ。
サトシ じゃあ、非我が無意識、他我が自意識に映る?
マサシ うん、非我が埋まれると、他我が産まれるよ。
サトシ つまり、自我が生まれると、他我が産まれる。
それなら、他我というものは、自我の写しか。
マサシ そうさ、自分である意味を、経験するため、
自分である意識は、自分でない意識を作った。
サトシ じゃあ、君のことも、僕が映し出しているの?
マサシ うん、それを認めれば、我を抜け出せるのさ。
サトシ ……………………!!
CASE 他のない自 と 自のない他
サトミ 自我と他我、どちらを、重んじるべきかな?
メグミ どちらも、同じぐらいに、重んじるべきなの。
サトミ 移し入れる、自我って、どういうものかな?
メグミ 自我とは、自分らしさが、自ら表れることよ。
サトミ 映し出せる、他我って、どういうものかな?
メグミ 他我とは、自分らしさが、他に現れることよ。
サトミ 自我を望み、他我に臨まないと、どうなるの?
メグミ 他我なき自我なんて、他から学べないだけよ。
サトミ じゃ、自我に移しても、他我に写せないの?
メグミ そうよ、自我を介しても、他我を解せないよ。
サトミ 他我を望み、自我に臨まないと、どうなるの?
メグミ 自我なき他我なんて、自から学べないだけよ。
サトミ じゃ、他我に写しても、自我に移せないの?
メグミ そうよ、他我を介しても、自我を解せないよ。
サトミ 自我だけは、積み重ねても、掘り返さない。
他我ばかりは、掘り返しても、積み重ねない。
メグミ うん、自我と他我、その両方が、必要なのよ。
サトミ じゃあ、自我を介して、他我を解していくの?
メグミ うん、他我を介して、自我を解していくのよ。
サトミ ……………………!!
CASE 非我 という 自我
マナミ 内なる世界、内界って、どういうものなの?
マサシ 自分らしいと、認められる、世界のことで、
同質である事を、望んでいる、自我のことさ。
マナミ 外なる世界、外界って、どういうものなの?
マサシ 自分らしいと、認とめない、世界のことで、
異質である事に、臨んでいる、非我のことさ。
マナミ どこまでが、自分らしいと、認められるの?
マサシ 思いのままに、想えるものが、自分なのさ。
マナミ 身体の内側までが、自分の世界じゃないの?
マサシ 思い通りに、体が動く人なら、そうだろうね。
マナミ 身体の外側まで、思い通りの人なんているの?
マサシ 実際には、すべての世界が、思い通りなのさ。
自分が、望んでいるから、臨んでいるだけさ。
マナミ 自分が生まれるときに、すべて選んできたの?
望んでいないものに、臨むことなんてないの?
マサシ そうさ、それを認めるのが、生の目的なのさ。
マナミ それなら、どうして、それを誰も認めないの?
生の目的が見えていて、どうして臨まないの?
マサシ それは、誰も望んでいないからさ、君もだよ。
マナミ ……………………
CASE 多 重 人 格
サトミ ねぇねぇ、多重人格って、どういうものかな?
メグミ 一つの肉体に、複数の人格が、存在するのよ。
サトミ そもそも、人格って、どのように作られるの?
メグミ 自分を守るために、整合性を保っているのよ。
サトミ 自分らしいものなら、受け容れていくけど、
自分らしくないものは、切り捨ててしまうの?
メグミ そうよ、誰でも、複数の人格を抱えているの。
大人になってから、性格が変ることあるよね?
サトミ それは、立場が変わるから、当たり前でしょ?
メグミ うん、普通は時間を掛け、整合性を保つのよ。
サトミ 衝撃的なことが起きて、整合性を保てないと、
瞬時に人格が切り替わる、多重人格になるの?
メグミ うん、人格を保つのは、自身を守るためなの。
自分を守れなくなるなら、人格を分けるのよ。
サトミ ええっ! 潜在的には、あたし多重人格なの?
メグミ そうよ、誰でもそうなのよ、ショックだった?
サトミ うん、こんな恐ろしい事、知りたくなかった。
メグミ うふっ、平常心を保つため、今の話を忘れる?
それとも、整合性を保つため、人格を分ける?
サトミ ……………………