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物語編

第一章 第十九話 物語編

第一章    現在   と   過去
第十九話 自意識の実感 と 無意識の実感

 

私の方が、世間に対して、壁を造ったからこそ、
人々の方も、自分に対して、壁を作ってしまった。
双方から見て、壁は壁である、当然の帰結と言える。

 

自分の方から、相手に対して、敬意を払うなら、
相手の方からも、自分に対して、誠意を示される。
誰から見ても、真実は真実である、これも当り前だ。

 

確かに、真理を訪ねたいと、本心を明かしたら、
一時的に、身近にいた人々は、私から遠ざかった。
無理もない、虚構が築き上げた、仮初の縁に過ぎぬ。

 

しかし、その跡から、真に相応しい縁が現れた。
欲得が絡む縁でもなく、恐怖心で縛る縁でもない。
自身のことを、自己以上に解する、真正な縁である。

 

私は、偽りを交えることなく、本心を明かした。
何も無い事を、認めて頂ける事が、有り難いこと。
有る事しか、見とめない世に在って、在り難いこと。

 

真に申し訳ないが、申し出は受けられないこと。
全てを忘れた私には、道を前に進むしかないこと。
私は、真理以外に、何者にも仕えることは出来ない。

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