物語編
第一章 第二一話 物語編
第一章 絶対 と 相対
第二一話 実感を与える と 実感が与える
君が、そうじゃなくて良かったよ、と、彼は笑った。
『我が教えが、絶対的に正しいと、誰もが言う。
誰もが言う、これをおかしいと、君は思わないか。
誰もが言えば、もはやそれは、相対的ではないのか。』
『確かに、絶対に酔い痴れる、それは強く甘い。
しかし、そろそろ、我々は、酔いから覚める時だ。
畢竟、酔い痴れるばかりでは、憎しみを吐き散らす。』
『一方、相対を隠れ蓑にする、弱き者達がいる。
あの雇われ賢者が、まさに、その典型と言えよう。
実体なき真理を、逆手に取り、何とでも言い含める。』
『老人の、絶対に釣られるのも、哀れな者だが、
詭弁使いの、相対に操られるのも、憐れな物だな。
どちらにせよ、煽られるだけで、地に足が着かない。』
『前者は、絶対を悟った振りで、神を騙り始め、
後者は、相対を解った振りで、斜めに構え始める。
どちらも、自らの対に捕われて、似たようなものだ。』
『絶対を振り翳すにせよ、相対を気取るにせよ、
人は、世を乱さない限りは、囚われても構わない。
しかし、漏れなく奴らは、我らが治世の障りとなる。』