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物語編

第二章 第五九話 物語編

第二章    暗鬼   と   明鬼
第五九話 心の虚を見る と 真の実を見る

 

内に築き上げられた信頼が、音を立てて崩れていく。

 

万が一と思ったが、貴様は奴からの廻し者か。
貴様の言っている事は、奴と全く同じではないか。
露骨に奴を持ち上げたり、思い当たる節が多々ある。

 

落ち着け、彼より先に、君が躓いてどうする。
誓を思い出せ、私と君とは、同志ではなかったか。
君の使命を奪うだけなら、初めから私が奪っている。

 

殺す前に、聞きたい事があった、だけだろう。
師の名を騙り、心を許した処で、全て聞き出して、
用が済めば殺す、貴様らなら、考えそうなことだな。

 

止めろ、昔の君の姿を、今の私の姿に映すな。
君は、私を通して、己の心の闇を見ているだけだ。
君が彼にしたように、私が君にすると、思っている。

 

かっ、今もって、口だけは、良く回るようだ。
だが無駄だ、貴様の言葉は、もう俺には届かない。
信じたものを、裏切られては、もう元には戻らない。

 

いや、内に現れたものが、外に溢れただけだ。
覆水盆に返らず、もう話すのは止めた方がいい。
言えば言うほど、俺は、貴様を信じなくなるだろう。

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